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公開日: 2025/7/29

【2025年最新】日本企業に迫られるDXの加速、そもそもDXとは?

1. 浮き彫りになったデジタル化の必要性

リモートワークへの移行、オンラインでの顧客との接点の強化、サイバーセキュリティへの対応……。こうしたデジタル技術を活用した変革を、「DX(デジタル・トランスフォーメーション=Digital Transformation」と呼ぶ。

DXの出発点は、スウェーデンの情報学者エリック・ストルターマン氏が2004年に提唱した「ITの社会への浸透によって生活をよりよい方向に変化させる」という概念である。2018年に経済産業省が「DXレポート」を公表したことで、日本でも広く使われるようになった。

2. なぜ近年、DXが注目されているのか

それではなぜ、20年以上前に提唱された概念が近年、注目を集めているのか。一つは、多くの企業が「これまでと同じ事業や戦略では生き残れない」という危機感を持ち始めたことが理由として挙げられる。デジタル化の進展で地域・国境を超えた競争が激化し、顧客の価値観が変わり、その多様化も進んでいる。デジタル技術を駆使した革新的なビジネスモデルを展開する新規参入者が、あらゆる産業でゲームチェンジ(局面の転換)を起こしていることも、大きな要因となっている。

たとえばインターネット通販(EC)。Amazonの急成長で、リアル店舗に依存する百貨店や総合スーパーが苦境に立たされている。
モノや権利を共有する「シェアリング・エコノミー」も台頭した。民泊仲介のAirbnbやタクシー配車のUberは、既存のホテル業界・タクシー業界にとって大きな脅威とされている。
「サブスクリプション」と呼ばれる定額制のビジネスモデルも浸透した。音楽配信のSpotifyや動画配信のNetflixは、いまでは日本でも定番の配信サービスであるということは、多くの人が知っているだろう。
さらに、「生成AI」も急速に進化した。ChatGPTに代表されるLLMは、多様な分野で業務効率化や支援に活用され、なくてはならないも存在になっている。
こうした「ディスラプター(破壊者)」によって既存産業の枠組みが次々と壊される中で、多くの企業はDXでビジネスモデルを大胆に変革させる必要性が出てきている。

3. 世界に遅れを取る日本のDX

日本企業のDXは海外にくらべて遅れていると言われている。

独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が実施した調査によると、2020年10月時点の日本企業は9割以上の企業がDXにまったく取り組めていないか、ようやく取り組み始めた段階にあるとされていた。当時はDXに十分に取り組めている企業は1割に満たない状態だった。

しかしコロナ禍を経て、2022年には約7割まで上昇、2024年の調査では77.8%まで上昇した※1。

浸透が進んでいる一方で、でスイス・ローザンヌを拠点とする、国際経営開発研究所(IMD)が発表した2024年の「デジタル競争力ランキング」では、日本は31位だった※2。高等教育の教師1人あたりの学生数や無線ブロードバンドの普及率、国と国民のオンラインサービス利用、ロボット産業のシェアなどいくつかの分野で高い評価を得ているが、上級管理職の国際経験、デジタルスキル習得、企業の変化への対応速度や俊敏性、ビッグデータ活用などでは非常に低い評価が続いている。

つまり、一部の技術環境やインフラは優れているものの、経営層の国際感覚や組織のデジタル実装能力には大きな課題があるといえるだろう。

経済産業省は「DXレポート」の中で日本でDXが進まなければ、既存のITシステムの複雑化・老朽化・ブラックボックス化が国際競争への遅れや経済の停滞をもたらし、2025年以降に最大で年間12兆円の経済損失が生じる可能性について、「2025年の崖」と名付け警告してきた。今年はその2025年にあたる。

4. 「とりあえずのIT化」はダメ。DXの本質は「変革」にある

では、実際にDXに取り組もうと思ったら何をすればいいのか。陥りがちなのが、「とりあえずのIT化」をして満足してしまうことだ。

「IT化」と「DX」はイコールではない。「IT化」が特定の業務の効率化を主目的とするのに対して、DXは全社にわたる戦略的な取り組みといえる。AIやIoTといったデジタル技術の進展は、DXの大きな推進力となる。

だが、こうした先進テクノロジーを導入して既存の業務を効率化しただけでは、DXを実現したとはいえない。重要なのは、「D=デジタル」よりも、「X=変革」すること。デジタル技術は「目的」ではなく、あくまでも「手段」なのである。

DXの対象は内部(社内)向けのものと外部(顧客)向けのものがある。内部向けのDXは組織運営や意思決定方法の変革、業務の自動化・不要化、外部向けのDXはビジネスモデルの転換や新規事業への進出、新たな顧客価値の創出などだ。

こうした業務・ビジネスの「変革」を、デジタル技術をフル活用して進めるのがDXの本質である。企業が優位性を確立するには、変化する顧客・社会の課題をつねにとらえて、素早く変革し続ける能力を身につけることが重要だ。既存の枠組みにとらわれない、新たな着眼点も欠かせない。

5. どんな企業であってもDXは「他人事」ではない

DXが必要なのは大企業だけではない。中小企業も、時代に合わせて変革し続けなくてはならない。中小企業は大企業にくらべてデジタル技術に精通した人材が少ないため、DXの遅れが指摘されている。「DXはすぐには必要ない」と二の足を踏む中小企業もあるようだが、規模が小さくても、デジタル技術で実現できることはたくさんある。

どのような業界であっても、DXは無関係ではいられない。製造業も小売業も、農業もサービス業も、教育産業も医療産業も、時代に合わせてデジタル技術でビジネスを変革することが求められている。

DXで重要なのは、社外との連携を軸にすることだ。革新的なビジネスモデルを創造するには、開発において自社の経営資源の枠にとらわれてはならない。DXには莫大な予算がかかる。だからこそ、経営トップの決断力が不可欠なのだ。

2025年の崖を迎え、旧態依然とした企業文化や商習慣、決済プロセスなどの変革に踏み込めた企業と、踏み込めなかった企業の差が明確になってきている。DXの遅れは致命的な経営リスクとなる。今後も、スピード感を持ってDXに取り組む必要があるだろう。

出典

※1 独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「DX動向2025」調査報告

※2 ビジネス短信- 世界デジタル競争力ランキング、スイスは2位に上昇、日本は31位(JETRO0)