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公開日: 2025/9/8

紙とExcelの経費精算に限界…証憑ごと電子管理する方法とは

1. 紙・Excelでの経費精算に潜む5つの非効率な課題

経費精算は、あらゆる企業において日常的に発生する業務の一つです。社員が立て替えた出張費や交際費、備品購入などの費用を、適切な証憑(領収書・レシートなど)とともに申請し、承認・支払い・保管までを経て完了するこのプロセス。しかし、いまだに多くの企業では「紙」と「Excel」を中心とした運用が続いており、現場では記入ミスや証憑の貼付漏れ、承認の滞留、紙の保管スペース不足など、さまざまな課題が表面化しています。

さらに、近年は電子帳簿保存法への対応も求められ、証憑をデジタルで管理する重要性が高まっています。これまで通りのアナログな経費精算では、法令遵守の観点からも業務の効率性の観点からも限界が顕在化しつつあります。

本記事では、紙・Excelでの「経費精算」業務の非効率な運用実態を明らかにしながら、電子管理への転換がいかに業務改善とガバナンス強化につながるかを解説していきます。まずは、紙やExcelを前提とした経費精算の課題から見ていきましょう。

1-1. 記入ミスや証憑の貼付漏れが多発

紙やExcelによる経費精算では、従業員が手書きや手入力で内容を記入し、領収書などの証憑を別途貼り付ける必要があります。この作業の中でよく発生するのが「記入漏れ」「金額ミス」「証憑の貼付忘れ」です。

例えば、出張旅費や接待費などの用途が不明瞭だったり、申請金額と領収書の金額が一致しないケースは、経理担当者が再確認・差戻しを行う原因となり、結果的に全体の処理スピードが大幅に低下します。これにより、社員の工数が増え、業務の属人化も進行します。

1-2. 保管・回覧が属人化と遅延を引き起こす

紙の経費精算書は、承認フローにのせるために物理的な「回覧」が必要です。承認者が出張中、あるいは在宅勤務の場合、承認が滞りがちになり、精算処理が長期間遅延するリスクもあります。また、回覧が終わった後には証憑を含めて紙で保管する必要があり、保管スペースの確保やファイリング作業にも相当な労力がかかります。

以下に、紙・Excelでの経費精算運用における主要な課題を図にまとめます。

【図1:紙・Excel中心の経費精算における課題フロー】

このプロセスの中で発生する「記入ミス・貼付漏れ」「回覧滞留」「入力ミス」「保管の手間」が、全体の非効率性を生んでいます。

1-3. 実例:紙運用による経費精算業務の非効率

ある中堅企業では、毎月末に約100名の社員が紙で経費精算を提出していました。各申請書には領収書を手貼りし、課長・部長の承認印を得てから経理部門へ回付するというフローでしたが、以下のような問題が頻発していました。

  • 領収書の貼付漏れや破損で差戻しが多発
  • 課長が外出中で承認が止まる
  • 経理が再入力時に金額を誤記し、後日訂正対応が必要
  • 書類保管棚のキャパオーバー

これらの課題が積み重なり、経費精算業務全体において月間25~30時間以上の工数が追加的に発生していました。特に差戻し対応や書類の捜索にかかる時間は無視できず、経理部門だけでなく申請者・承認者の負担も大きくなっていました。

【表1:紙・Excel運用における経費精算の課題と影響】

項目 内容
記入ミス 手書き・手入力による金額・日付・費目の誤記
貼付漏れ 領収書の添付忘れや破損で差戻し発生
回覧滞留 承認者の不在や出張により承認が進まない
再入力の手間 経理担当者が手作業で金額・日付を再入力
保管スペース 紙の証憑と申請書をファイリングするため、保管コストと管理工数が増大

このように、「紙とExcelでの経費精算」には多くの管理上の課題が潜んでおり、業務効率の面でもガバナンスの面でも重大なリスクを抱えています。

こうした状況を改善するためには、「経費精算を管理するプロセス自体」を見直し、電子的な運用への転換が求められています。次章では、法制度面からもその必要性が高まっていることを、「電子帳簿保存法」との関係性から解説します。

2. 電子帳簿保存法との関係

経費精算業務を電子化するうえで避けて通れないのが「電子帳簿保存法」の理解です。これは、国税関係帳簿・書類を紙ではなく電子データで保存する場合のルールを定めた法律であり、経費精算書や領収書を電子管理する場合も対象になります。

単に「PDFで保管している」だけでは要件を満たしているとはいえず、企業が法令違反のリスクを負わないためには、法律で求められる厳格な「電子保存のルールと要件」を押さえておく必要があります。

2-1. スキャナ保存・電子取引保存のルールと要件

電子帳簿保存法は、1998年に施行されて以降、時代のデジタル化に応じて幾度か改正されてきました。特に、2022年の大幅な改正により「スキャナ保存」「電子取引データ保存」に関する要件が明確化され、多くの企業にとって対応が必須となりました。

経費精算で重要になるのは主に「スキャナ保存」と「電子取引データ保存」の2つです。領収書など紙の証憑をスキャンして保存する場合は、以下のような要件を満たす必要があります。

① 解像度200dpi以上でスキャンする

② タイムスタンプを付与または訂正・削除履歴が記録されるシステムを用いる(真実性の確保)

③ 改ざん防止措置として、訂正・削除の履歴が残る仕組みを備える

④ 検索機能の確保(取引年月日、金額、取引先など)

一方、メールなどで受け取る電子領収書やPDFファイルなど「電子取引データ」については、紙に出力して保存することは原則禁止となりました。電子データのまま保存する必要があり、この場合も真実性の確保、検索機能の確保が必要です。

このように、ただのスキャン保存ではなく、「法的に有効な電子保存」を実現するには、これらのルールを満たすシステムを導入し、運用ルールを整備することが求められます。

2-2. タイムスタンプと訂正履歴がなぜ必要か

経費精算の証憑を電子保存する際、最も重要な要素の一つが「タイムスタンプ」です。これは、ある電子データがいつ存在していたか、またそれ以降改ざんされていないことを第三者が証明する技術であり、電子帳簿保存法における「真実性の確保」の根拠になります。

スキャナ保存の場合、従来は「受領から3営業日以内」にタイムスタンプを付与する必要がありましたが、2022年の法改正により、現在では「受領から最長2か月以内」というより現実的な期限が認められています。

また、タイムスタンプの代替手段として、「訂正・削除履歴が記録されるシステム」を用いることも認められており、その場合はタイムスタンプの付与を省略することができます。これにより、運用の柔軟性が高まりつつ、改ざん防止の要件も満たすことが可能です。

加えて、経費申請内容や添付証憑が後から修正された場合には、誰が・いつ・どのように変更したかを記録し、監査時の証拠として備える必要があります。

【表2:電子帳簿保存法の主な要件と経費精算への影響】

要件 内容・経費精算への影響
タイムスタンプ付与 受領日から最長2か月以内に付与、または訂正・削除履歴を残すシステムに入力することで代替可能
検索性の確保 取引年月日・金額・取引先などの項目で検索できるようにする
訂正・削除履歴の保存 誰がいつどんな変更を行ったかを記録し、改ざんリスクを低減
業務プロセスの明確化 スキャン・確認・保管までの担当者と処理手順を明文化
出力可能性の確保 電子保存している内容を、必要に応じて紙やPDFで出力できること

こうした対応を怠ると、税務調査の際に経費として認められない可能性があり、企業にとっては大きなリスクとなります。

電子帳簿保存法は、単なる経費精算の効率化にとどまらず、「法令遵守」と「内部統制」の要でもあります。次章では、これらのルールに対応しながらも、経費精算業務をいかに効率化できるか──「証憑ごと電子管理」するメリットについて具体的に見ていきましょう。

3. 経費申請と証憑を一元管理する電子化のメリット

紙やExcelによる経費精算における最大の課題は、「証憑(領収書など)」と申請書類の管理・確認作業に多くの手間がかかる点です。これらの作業を電子化することで、経費精算の管理における負荷を大幅に軽減でき、業務全体の効率が飛躍的に向上します。

証憑書類を正確かつ安全に保管・検索するためには、経費精算システムと連携可能な文書管理システムを活用するのが効果的です。

実際にどのような文書管理ツールがあり、どんな特徴を持つのかを比較したい方は、 【2025年版】おすすめのドキュメント管理ツール16選|機能比較と選び方ガイドもぜひご覧ください。


本章では、「領収書付き経費書類を電子管理することのメリット」について、実務的な観点から詳しく解説します。

3-1. 証憑と申請書をURLで紐づけて照合作業を削減

従来の経費精算では、領収書を紙で貼付したり、PDFをメール添付で送付したりする運用が主流でした。しかしこの方法では、申請書と証憑が分離しがちで、照合作業に多くの時間がかかるうえ、証憑の紛失・破損リスクも発生します。

こうした課題を解決するのが、以下のような電子的な運用フローです。

【図2:文書管理システムを活用した証憑の紐付けフロー】

この方法であれば、証憑と申請内容が確実に紐付けされ、システム上で安全かつ効率的に管理されます。領収書の物理的な貼付・保管が不要になるため、紙媒体の運用にありがちな「貼付漏れ」「破損」「回覧中の紛失」といったリスクを根本から排除できます。

3-2. 支払日・費目・申請者で素早く検索・集計できる仕組み

この運用の最大のメリットは、管理者による確認作業の手間が劇的に減ることです。

申請者が文書管理システムのURLを経費申請書類に貼るだけで、承認者や経理担当者はリンク先から直接、該当の領収書画像やPDFを確認できます。これにより、紙の申請書をめくりながら領収書を探したり、PDFファイルをメールから都度ダウンロードしたりする必要がなくなります。

また、経費精算書類は、提出後もさまざまな理由で再確認が必要となるケースが多く、紙やExcelベースで経費精算を管理している場合、過去の申請データを探すにはファイルを開き、目視で確認しながら検索する必要があり、非常に時間がかかります。特に月をまたいだ照会や、部署横断での確認が必要な場合は、確認作業だけで数時間単位の作業になるケースもあります。

一方で、文書管理システムや経費精算システムでは、「支払日」「申請者」「費目」などの項目から、数秒で目的の申請情報と証憑データにアクセスできます。

【表3:電子経費精算データの検索イメージ】

🔍 検索条件
[費目]:交通費 [申請者]:田中 [支払日]:2025年4月1日〜30日
検索結果
2025年4月3日 交通費 3,200円 領収書URLあり
2025年4月21日 交通費 5,180円 領収書URLあり

このような検索性があることで、特定の費目だけの集計や、部署別・申請者別の支出傾向の把握、または不正利用の兆候検知などにも活用することができます。

【表4:文書管理システム連携による管理業務の改善効果】

項目 従来(紙・Excel) 文書管理連携後
証憑の確認作業 原本確認・目視照合が必要 URLクリックで即時確認
紛失・破損リスク 高い 低い
関連書類の検索 フォルダ・ファイルから手作業で検索 文書管理システムでタグ・条件検索可能
照合ミスの可能性 証憑の貼付漏れ・見間違いが発生 URLで明確に紐付けられ、照合ミスが大きく低減

このように、文書管理システムとの連携による証憑の電子管理は、経費精算の正確性と効率性を両立させる有力な方法です。次章では、こうしたデータの整備をさらに高度化する手法として、OCRを活用した「自動項目抽出」について紹介します。

4. OCRで領収書を自動読み取り!台帳作成の手間をゼロに

経費精算においては、申請者が提出する領収書やレシートから「日付」「金額」「取引先名」などの情報を正確に読み取り、それを台帳(Excelや管理システム上の一覧)に転記・集計する作業が発生します。しかしこの作業を人手で行っていると、入力ミス・転記漏れ・処理遅延といった問題が発生しやすくなります。

こうした非効率を解消する方法として、領収書をスキャンし、OCR(光学文字認識)で自動的に項目を抽出し、経費台帳へ自動反映する仕組みが注目されています。本章では、その具体的な流れとメリットについて解説します。

4-1. 領収書のスキャンから項目自動抽出までの流れ

OCR(OpticalCharacter Recognition)は、画像やPDFから文字情報を自動的に読み取る技術です。領収書やレシートをスキャンしてOCRにかけることで、以下のような経費情報が自動で抽出されます。

  • 支払日(例:2025年6月12日)
  • 金額(例:4,580円)
  • 取引先名(例:○○カフェ)
  • 支払手段(例:現金、クレジットカードなど)
  • 費目(例:会議費、交通費、交際費)

この処理は一枚ずつ手作業で確認する必要がなく、まとめて処理することも可能です。また、最新のOCR技術では、写真で撮影したレシートや手書きの領収書にも高精度で対応できるため、スマートフォンからのアップロードにも適しています。

【図4:スキャンからの自動項目抽出の流れ】

4-2. 経費台帳の自動生成で転記ミスを防止

抽出されたデータは、指定された経費台帳テンプレートに自動で転記され、台帳作成の手間が一気に削減されます。たとえば次のような台帳が自動生成されます。

【表5:自動生成された経費台帳の例】

申請者 支払日 金額 費目 取引先名 領収書URL
田中一郎 2025/06/10 3,280円 交通費 ○○タクシー https://xxxxx.com/receipt001.pdf
鈴木花子 2025/06/12 4,580円 会議費 △△カフェ https://xxxxx.com/receipt002.pdf
佐藤健 2025/06/15 2,200円 備品費 株式会社ZZZ https://xxxxx.com/receipt003.pdf

このような台帳は、CSV形式で出力して会計システムと連携させることもでき、経費申請から仕訳作成、支払処理までのプロセス全体の効率化に寄与します。ただし、会計システムとの連携には、フォーマットの整備や仕訳ルールの事前設定が必要になる場合があるため、自社の業務要件に応じた導入設計が不可欠です。

また、OCR処理された領収書データ(PDFや画像ファイル)はクラウド上の文書管理システムに保存され、台帳内のURLから直接アクセスできるため、証憑の照合や監査対応もスムーズになります。

4-3. 申請者・管理者の負担を大幅に軽減

自動項目抽出と自動台帳作成を導入することで、次のようなメリットが得られます。

  • 手入力・転記ミスの削減:人為的なミスを防ぎ、申請内容の正確性を向上。
  • 申請者・管理者双方の負荷軽減:申請者はスキャンのみでOK。管理者も手入力・照合の手間が不要に。
  • 検索・分析の高速化:台帳が構造化されているため、費目・部署・金額などの集計や検索が即時対応可能。
  • 監査・税務調査対応が容易に:台帳+証憑URLがそろっており、調査時の資料提出もスムーズ。

経費精算の電子化を真に業務効率化につなげるには、「スキャン⇒データ抽出⇒台帳作成」までのプロセスを自動化することが重要です。次章では、こうした運用を現場に定着させるための、システム導入の具体的な流れを紹介します。

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5. 経費精算システム導入のステップと失敗しない設計ポイント

経費精算の電子管理を成功させるには、単にツールを導入するだけでなく、自社の業務フローに合った形でスムーズに運用を立ち上げることが不可欠です。ここでは、経費精算や文書管理を電子化するためのシステム導入の流れを、ステップごとにわかりやすく解説します。

5-1. ステップ1:現状の業務フローと課題の棚卸し

最初のステップは、現在の経費精算業務の全体像を把握し、どこにボトルネックや非効率があるのかを明確にすることです。例えば以下のようなポイントを確認します。

  • 領収書はどのように回収しているか(紙、メール、スマホ撮影など)
  • 承認フローの人数と順番(課長→部長→経理など)
  • 経費項目の分類方法(費目ごとに違うExcelシート)
  • 保管方法(紙ファイル/共有サーバ/クラウドなど)

この棚卸し作業では、経理部門だけでなく、申請者・承認者・システム担当など関係する全ステークホルダーを巻き込んでヒアリングすることが重要です。これにより、現場の実態に即した課題の把握が可能となり、どこにシステム化の優先度が高い課題があるかを明確にできます。

5-2. ステップ2:要件定義とシステム選定

次に行うのは、要件の明確化と導入するシステムの選定です。自社の運用に適したシステムを選ぶには、次のような要件を洗い出しましょう。

  • 文書管理機能(アップロード/タグ付け/URL発行)
  • OCR機能(領収書の自動読取)
  • ワークフロー設定(承認ステップのカスタマイズ)
  • 電子帳簿保存法への対応(タイムスタンプ、訂正履歴)
  • 外部サービスとの連携(会計ソフト、チャットツールなど)
  • セキュリティ基準(アクセス制御、通信の暗号化、認証方式)

【表6:経費精算電子化システムの選定ポイント】

選定項目 確認ポイント例
OCR精度 手書き領収書や写真から正確に読み取れるか
電子帳簿保存法対応 タイムスタンプ・検索性・訂正履歴の保存に対応しているか
UIの使いやすさ 現場の利用者が直感的に使える画面設計か
セキュリティ アクセス権限管理・暗号化対応
初期費用・運用コスト 月額課金・ユーザー単位・追加機能の有無など

5-3. ステップ3:業務フローへの適用・マスタ整備

システムが決まったら、次は業務へスムーズに組み込むための準備です。以下のような事前設計・設定作業を行います。

  • 費目カテゴリの統一(交通費、交際費、出張費など)
  • 運用ルールの整備(アップロード先の指定、マニュアル作成など)
  • 書類テンプレートの整備(申請フォームや領収書台紙など)
  • 既存データの棚卸しと移行設計(必要な過去データを新システムへ)

この段階で、従来の紙・Excelベースの業務と新システムの接続点を明確にし、データ移行作業や旧運用との整合についても事前に調整しておくことで、移行後の混乱や重複入力を防げます。

5-4. ステップ4:運用テストとマニュアル整備

いきなり全社展開するのではなく、まずは一部部署や限られた費目から導入し、パイロット運用(試験運用)を行います。テスト運用で見つかった課題に対して、以下のような準備を進めます。

  • 利用者マニュアル・操作動画の作成
  • Q&A対応表の整備
  • 承認者・経理部門へのレクチャー
  • トラブル時の問い合わせ窓口の設置

現場の混乱を最小限に抑えるためには、事前の教育と丁寧なサポートが非常に重要です。

5-5. ステップ5:本格運用・効果測定と改善

準備が整ったら、全社または対象部門で本格導入をスタートします。導入後は、一定期間ごとに以下の指標で効果測定を行い、必要に応じて改善していく運用が理想です。

  • 管理者の確認・照合工数の削減時間
  • 証憑の貼付ミス・申請差戻しの件数
  • 監査対応時の資料提出時間

【図5:経費精算電子化システム導入の全体フロー】

6. まとめ:経費精算の電子化は業務効率とガバナンス強化の両立策

本記事では、「紙やExcelによる経費精算業務の限界」に着目し、領収書などの証憑を含めて電子管理する方法について、課題の整理から具体的な対応策、導入の流れまでを解説してきました。

経費精算業務は一見ルーティンな業務のように思えますが、証憑のミス・紛失、承認や保管の手間、法令対応の煩雑さなど、放置すれば業務効率・ガバナンスの両面でリスクが高まります。

その解決策として、文書管理システムとOCR技術の活用による経費精算の電子化は、有効かつ現実的な手段となります。

6-1. 各章のポイント振り返り

以下に、各章で取り上げた経費精算における課題と、それに対する電子管理の効果を整理します。

【表7:経費精算業務における課題と電子管理による改善まとめ】

観点 従来の課題 電子管理導入後の効果
記入・貼付のミス 手書き入力ミス、領収書の貼付漏れが頻発 アップロードURLで証憑を確実に申請に紐付け
保管・回覧の手間 回覧が滞留し、紙書類の保管スペースが不足 クラウド上で一元管理、物理的保管が不要
法令対応の難しさ 電子帳簿保存法への対応が不十分 タイムスタンプ・検索性・訂正履歴に対応したシステムで安心
照合の負担 原本を探し回る、目視で照合する手間が大きい URLリンクから即確認
検索・再提出時の非効率 ファイルを探すだけで時間がかかる 支払日・費目・申請者等で即検索
転記・台帳作成の負荷 領収書内容を人が再入力、ミスや処理の遅延が発生 OCRで自動抽出し台帳へ自動反映、入力作業ゼロへ

6-2. なぜ今、経費精算の電子化が必要なのか?

多くの企業では、経費精算業務が長年にわたり「紙」と「Excel」に依存してきました。しかし現在、その運用が持つ問題は以下のような実務的・制度的要因により、もはや無視できないものになりつつあります。

  • 法令対応(電子帳簿保存法)が義務化・厳格化され、紙保存ではリスクが高まった
  • テレワーク・在宅勤務の拡大で、紙回覧・押印運用が限界に
  • 人材不足により、経理部門の手作業対応の負担が限界を迎えている
  • ガバナンス強化・監査対応の観点からも、履歴・検索・保存の透明性が必要

こうした背景の中で、OCRやクラウド文書管理を活用し、証憑の取得・紐付け・台帳作成・保存・検索・提出までを一気通貫で効率化することは、企業の生産性とコンプライアンスを同時に支える施策といえます。

6-3. 今後の一歩:自社に最適なステップから始める

もし以下のような状況に一つでも心当たりがあれば、今が「経費精算プロセスの見直し」に踏み出す好機です。

  • Excelや紙での経費台帳が複数存在し、集計や精査に時間がかかる
  • 証憑の提出が遅れがちで、経費処理が月をまたぐことがある
  • 台帳と領収書が別管理で、照合ミスや紛失が発生している
  • 電子帳簿保存法の要件を満たせているか不安

本記事で紹介したように、文書管理システムとOCRは段階的に導入が可能です。最初は「証憑のアップロード+URLの申請書貼付」だけでも十分な効果を得られます。

経費精算の電子管理は、ただのシステム導入ではなく「運用負荷の軽減」と「ガバナンス強化」の手段です。限られたリソースで最大の効果を生み出すために、できるところから第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。

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