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公開日: 2025/9/5

紙の勤怠表はもう限界?労務監査に備えるスマートな管理方法

1. 勤怠表の紙・Excel運用の課題

「勤怠表は紙で十分」「Excelで管理できているから問題ない」――そう考えている企業も少なくありません。しかし近年、労働基準監督署による監査の強化や、働き方改革関連法の施行により、勤怠データの適正な管理がより重要視されるようになっています。

その中で、紙やExcelによる従来型の勤怠表運用には、いくつものリスクと非効率が潜んでいます。人為的な記入ミスや修正の追跡が難しい、保管や整理に膨大な工数がかかる、といった課題は、監査や従業員とのトラブル時に大きな障壁となります。

ここでは、紙・Excelによる勤怠表の管理方法が抱える具体的な問題点について、2つの観点から詳しく解説します。これを機に、自社の運用方法を見直すきっかけにしてみてください。

1-1. 記入漏れ・修正の追跡が困難

紙の勤怠表や、Excelで個別管理されている勤怠表では、従業員の入力ミスや記入漏れ、さらには後から行われた修正の履歴を正確に把握することが難しくなります。

特に紙ベースの場合、記入者が手書きで修正を行った場合でも、その修正日時や理由を記録として残す仕組みが整っていないことがほとんどです。仮に二重線や訂正印などで対応していたとしても、監査においては「なぜ」「いつ」「誰が」修正したのかが求められることも多く、証拠としての不十分さが指摘されるリスクがあります。

Excelの場合も、上書き保存によって過去の状態が消えてしまうため、誤った入力や修正をした場合に「元の情報に戻せない」「誰がいつ変更したかが分からない」といった問題が発生します。バージョン管理を意識して別ファイルで保存する運用も見られますが、ファイル名の付け方が属人的だったり、管理が煩雑になったりするため、実態としてはあまり機能していません。

【図1:紙・Excel運用における修正追跡の困難さ】

このような状況では、万が一のトラブル時に企業側が「適正に勤怠を管理していた」と証明することが難しくなり、企業のコンプライアンス体制に対する信用を損ねる可能性があります。

1-2. 保管・整理に手間がかかる

もう一つの大きな課題は、紙やExcelファイルによる勤怠表の保管・整理の負荷です。

紙の勤怠表は月単位・社員単位で大量に発生するため、保管スペースを多く取るうえ、必要なときに探し出すのに時間がかかります。特に年次監査や労基署調査などで数年前の勤怠記録を提出する必要がある場合、キャビネットやファイルを一つひとつ探す作業が発生します。これは非常に非効率であり、担当者にとっては大きなストレスです。

一方、Excelファイルについても、フォルダ構成やファイル名の命名規則が統一されていないケースが多く、特定社員の特定月の勤怠表が見つからないといった事態がしばしば発生します。加えて、ファイルサーバや共有ドライブ上の肥大化したデータは、検索性が悪く、セキュリティ面でも懸念が残ります。

【表1:紙・Excel運用における保管・検索の負荷比較】

管理方式 保管負荷 整理のしやすさ 検索性 セキュリティリスク
紙(物理保管) 高い 低い 低い 高い(紛失・盗難)
Excel(ローカル) 中程度 中程度 低い〜中 中(誤削除・誤操作)

このように、紙やExcelでの勤怠表管理は、現場のオペレーションに大きな負荷をかけるだけでなく、企業としてのリスク管理や監査対応の観点からも最適とは言えません。

記入の正確性、修正の履歴管理、保管と検索の効率性――これらの観点から見ても、紙・Excel運用には限界があります。次章では、法令上の勤怠表保存義務と、それに対する効果的な対応方法について掘り下げていきます。

2. 勤怠記録の保存義務とその対応

従業員の勤怠表は、単なる業務記録にとどまらず、企業が法令を遵守しているかどうかを判断するための重要な証拠資料でもあります。労働基準法では、賃金台帳や労働時間に関する書類の保存期間が明確に定められており、企業にはその記録を一定期間、適切に管理する義務があります。

この章では、まず法的な保存義務の内容を整理し、そのうえで紙運用で対応する場合の課題と、より効率的で確実な代替手段について解説します。

2-1. 労基法に基づく5年の保管義務

2020年4月1日に施行された改正労働基準法により、企業は勤怠記録を含む「労働関係に関する重要な書類」を5年間保存することが義務付けられています。この保存対象には以下のような文書が含まれます:

  • 労働者名簿
  • 賃金台帳
  • 出勤簿・勤怠表(タイムカード含む)

これらの記録は、監督署の調査時や、労使トラブル発生時の証拠資料として提出を求められることがあり、不備があれば企業の信頼や法令順守体制に疑念が持たれる可能性もあります。

【表2:勤怠記録に関する保存義務の概要】

書類の種類 保存期間 関連法令
勤怠表・出勤簿 5年 労基法第109条
賃金台帳 5年 同上
労働者名簿 5年 同上

このように、5年間にわたって勤怠記録を確実に保管する体制づくりは、すべての企業にとって必須事項といえます。

2-2. 紙だと監査対応に時間がかかる

勤怠表を紙ベースで保存している場合、監査や調査のたびに発生する「探す・まとめる・提出する」作業が大きな負担になります。とくに以下のような場面では、紙運用の非効率性が顕著です。

  • 労基署から調査が入ったとき:対象者と期間を指定されることが多く、該当の勤怠表を短期間で提出する必要がある。
  • 従業員とのトラブル発生時:残業時間・休憩時間・勤務実態を立証する必要があり、紙の記録では曖昧になりやすい。
  • 内部監査・ISO監査への対応:対象部署の過去数年分の勤怠表を事前に提出するよう求められるケースがある。

紙の書類をファイリングして保管していても、年月ごと・社員ごとの分類、インデックス付け、確認、コピー、PDF化といった作業が発生します。特定の社員の5年前の出勤状況を確認しようとしたとき、該当のファイルが見つからない、保管が不十分だった、ということも珍しくありません。

このように、紙の勤怠表は「保管義務は果たしているが、取り出すのに時間がかかる」「必要なときに探しきれない」という監査対応上、重大な課題となる場合があります。

労基法における5年保存義務は「ただ取っておけばいい」というものではありません。「必要なときに、正確に、すぐに出せる」ことが実質的な要件とされる場面も多く、企業のコンプライアンス姿勢が問われるポイントでもあります。

そのためには、紙やExcelでの管理ではなく、確実に検索・抽出できる体制づくりが欠かせません。近年では、勤怠表をはじめとする労務関連文書の保存や検索に対応した文書管理システムも登場しており、どのような製品があるのか比較したい方は、【2025年版】おすすめのドキュメント管理ツール16選|機能比較と選び方ガイドもぜひご覧ください。

次章では、このような課題をどのように解決できるのか、勤怠表の管理において文書管理システムが果たす役割について詳しくご紹介します。デジタル化の第一歩として、最も現実的かつ効果的な解決策を検討してみましょう。

3. 文書管理システムで勤怠表を管理する理由

3-1. 年月・社員名で即検索できる利便性

勤怠表の管理において、検索性の高さは業務効率と法令対応に直結する重要な要素です。特に、年月や社員名といった検索軸で即時に目的の勤怠表へアクセスできるかどうかは、日常業務だけでなく、監査対応や社内照会においても極めて大きな差を生みます。

従来の紙やExcel管理では、例えば「2023年10月のA部署の田中さんの勤怠記録を出してほしい」といった依頼に対して、物理ファイルをめくったり、フォルダをまたいで複数のExcelファイルを開いたりと、膨大な作業が必要でした。しかも、属人化された保存ルールが存在する場合、「どのフォルダにあるか分からない」「ファイル名が統一されていない」といった問題も発生しがちです。

文書管理システムでは、勤怠表をアップロードする際に「年月」「社員名」「部署名」などのメタデータ(文書属性)を設定し、それをもとに検索が可能です。検索ボックスに「2023年10月 佐藤」と入力するだけで、該当の勤怠表が即座に表示されます。

【図2:文書管理システムにおける勤怠表検索の流れ】

また、あいまい検索やフィルター機能も備わっているため、「2023年下期に在籍していた社員全員の勤怠表」など、条件を組み合わせた複雑な検索にも対応可能です。さらに、プレビューやサムネイル表示で内容をすぐに確認できるため、ファイルを1件ずつ開く手間もありません。

こうした即時性は、社内の問い合わせ対応や報告書作成、働き方の分析、労働時間管理といった日々の業務をスピードアップさせると同時に、「必要な書類を迅速に提示できる」体制を構築する上で不可欠です。

検索性の低い勤怠表は、実務上“存在しないに等しい”とさえ言えます。その認識のもと、検索性を確保できる仕組みとして文書管理システムを導入することが、企業の情報管理体制を一段上のレベルに引き上げます。

3-2. 一元保管で紛失防止

勤怠表の管理においてもう一つ大きな課題となるのが「紛失リスク」です。紙に印刷された勤怠表は保管場所が分散しやすく、異動や担当者の変更によって所在不明になるケースも珍しくありません。Excelファイルであっても、個人のPCや部署ごとの共有フォルダにバラバラに保存されていれば、いざというときに必要な情報が見つからない、あるいは誤って削除されていたという事態にもなり得ます。

文書管理システムでは、すべての勤怠表を一元的にクラウド上またはオンプレミスのサーバーに集約して保管します。ファイルの格納ルールやメタデータの設定をシステム上で標準化できるため、「どのファイルがどこにあるか」が常に明確になり、属人化も防止されます。

【表3:紙・Excel運用と文書管理システムの保管比較】

保管形式 保存場所 紛失リスク 管理者の負荷
ファイル棚・倉庫 高い 高い
Excel(ローカル) 各人のPC・部署共有フォルダ 中~高 中程度
文書管理システム クラウド上で一元管理 低い 低い

さらに、文書管理システムでは履歴確認機能も備えているため、誤って削除したり上書きしたりしても過去の状態に復元することが可能です。これにより、企業としての“守り”の体制が大きく強化されます。

また、アクセス権限も部門ごと・役職ごとに設定可能であり、意図しない第三者による閲覧・改ざんのリスクも低減できます。勤怠表のような個人情報を含む重要な書類において、こうした情報セキュリティ面の強化は欠かせません。

紛失・散逸を未然に防ぎ、「いつでも・誰でも・安全に」アクセスできる。それが、文書管理システムによる一元管理の最大のメリットです。

3-3. 監査対応の効率化

労基署の調査や社内監査、ISO監査、または労働争議における証拠提出――こうした場面で勤怠表は“即座に出せるかどうか”が企業の信用とコンプライアンスを左右します。しかし紙やExcelで勤怠表を管理していると、対象の社員や期間を探すだけで数時間、PDF化やコピーにさらに時間を要することも少なくありません。

文書管理システムであれば、対象社員名・期間を検索で指定すれば該当勤怠表を一括で抽出し、PDF形式で即出力することができます。事前にテンプレート化された出力設定を利用すれば、数十件の勤怠記録を一括でまとめて提出用資料として作成することも可能です。

また、文書管理システムでは操作ログも記録されており、誰がいつ何のファイルを編集したかが明確になります。これは監査担当者にとって非常に安心できるポイントであり、企業としての信頼性を高める材料にもなります。

加えて、必要な書類を迅速に出せることは、調査担当者との信頼関係構築にもつながります。逆に、「時間がかかる」「一部しか出せない」といった対応は、無用な疑念を生む結果にもなりかねません。

業務の現場だけでなく、法令遵守・リスクマネジメントの観点からも、監査対応力の向上は企業経営に不可欠です。文書管理システムは、単なる業務効率化にとどまらず、企業のガバナンスを支える基盤としての価値を持っています。

4. クラウド管理でのセキュリティ対応

勤怠表には従業員の氏名や出退勤時間、勤務日数、残業時間といった機微な個人情報が含まれており、不適切な管理による情報漏洩は企業にとって重大なリスクです。さらに、労働基準監督署の調査や従業員との労務トラブルの際には、「誰が、いつ、どのように」データを扱ったかという証跡が求められる場面も少なくありません。

こうした背景から、勤怠表をクラウド上で管理する場合、セキュリティ対策は欠かせない要素となります。本章では、クラウド型文書管理システムにおける代表的なセキュリティ機能として「IP制限・閲覧権限の設定」と「操作ログによる証跡管理」の2つに焦点をあて、その仕組みと重要性を解説します。

4-1. IP制限・閲覧権限で漏洩防止

クラウド管理における最大の利点のひとつは、「どこからでもアクセスできる」柔軟性にありますが、それは同時にセキュリティリスクを孕んでいます。たとえば、社外のフリーWi-Fiや個人端末から勤怠表にアクセスされた場合、情報漏洩の危険性が高まります。これを防ぐために有効なのが、IPアドレスによる接続制限と、ユーザーごとの閲覧権限設定です。

IP制限とは、事前に許可されたネットワーク(たとえば本社や各拠点の固定IP)以外からのアクセスを遮断する機能です。これにより、社員が自宅や外出先からアクセスする場合も、会社支給のVPN接続経由など特定のルートを経ない限り、勤怠データに触れることができません。

また、閲覧権限の設定では、ユーザーごとに「閲覧のみ」「編集可能」「ダウンロード禁止」といった細かな操作レベルを割り当てることができます。たとえば人事部は全社の勤怠表を編集可能、各部署のリーダーは自部門のみ閲覧可能、一般社員は自分の勤怠表だけを確認可能、というように制御できます。

【表4:IP制限と閲覧権限の活用例】

セキュリティ機能 対象範囲 効果
IPアドレス制限 アクセス元(ネットワーク) 社外からの不正アクセスを遮断
閲覧・編集権限 ユーザー/グループごと 閲覧・編集できる勤怠表を制限可能
ダウンロード制限 ファイル操作機能 勤怠表の社外持ち出しを防止

このように、情報の機密性・可用性・完全性(いわゆるCIAの原則)を守るための設定を柔軟に行える点が、クラウド文書管理システムの強みです。重要な勤怠データを“守りながら使う”運用が実現できます。

4-2. 操作ログの記録による証跡確保

勤怠表の管理においてもう一つ見逃せないのが、「いつ・誰が・どのような操作を行ったか」という履歴の記録、すなわち操作ログの保持です。これは「証跡(エビデンス)」としての役割を果たし、監査対応や内部統制、万が一の不正調査時に重要な根拠となります。

たとえば、ある勤怠表の残業時間が後から変更されていた場合、「誰が修正したのか」「いつ修正したのか」「元の値は何だったか」が明確になっていなければ、不正や改ざんの疑いを否定することはできません。

多くの文書管理システムには、こうした操作ログを自動的に記録・保存する機能が備わっており、次のような情報を保持することが可能です。

  • 閲覧・編集・ダウンロード・削除などの操作内容
  • 操作を行ったユーザーとその所属
  • 操作日時
  • アクセス元のIPアドレスや端末情報
  • 修正前と修正後の内容(バージョン履歴)

【表5:操作ログに記録される主な項目】

操作日時 操作者(ID) 操作内容
2025/07/01 10:12 tanaka 編集
2025/07/01 10:15 tanaka ダウンロード
2025/07/02 09:00 yamamoto 閲覧

これにより、内部統制の強化はもちろん、「不正をしようとしても必ずログに残る」という抑止力としても機能します。さらに、こうしたログは通常の画面上からすぐに参照可能であり、必要に応じて出力し、監査資料として提出することも可能です。

企業のガバナンスが厳しく問われる今、証跡の可視化は単なるセキュリティ対策ではなく、組織の透明性と信頼性を支える重要な機能です。

5. 勤怠管理システムとの連携可能性

勤怠データの入力・集計・承認といった一連の作業は、現在では多くの企業でクラウド型の勤怠管理システムによって行われています。しかし、それらのデータをそのまま保管しているだけでは、法定の保存義務を満たせない、あるいは監査対応時の提出フォーマットに不備があるといった問題が残るケースも少なくありません。

そこで注目されているのが、勤怠管理システムで出力したデータを、文書管理システムに取り込んで一元保管・検索・提出対応まで行うという運用モデルです。本章では、その中でも特に現実的かつ多くの企業が実践している「Excelエクスポートからの取り込み」について詳しく解説します。

5-1. Excelエクスポートからの取り込みが現実的な理由

多くの勤怠管理システムでは、日々の勤怠データをExcel形式で出力できる機能が標準で備わっています。たとえば以下のような場面で活用されています。

  • 月次の締め処理後に、各従業員の勤怠状況をExcelで出力
  • 部門別・社員別の集計表を人事部門が取りまとめ

このような出力ファイルは、表形式で整っており、文書としての保存・提出にも適しているため、文書管理システムへの連携がスムーズです。具体的には、以下のような手順で取り込みが行われます。

【図3:Excelファイルの取り込みフロー】

このフローであれば、システム間のAPI連携などの開発コストをかけずとも、手軽かつ確実に勤怠表を保存対象として管理することが可能になります。

5-2. メタデータの自動付与

さらに、Excelファイルのファイル名や内容をもとに、アップロード時に自動的に「年月」「社員名」「部署名」といった検索用の属性(メタデータ)を付与する仕組みを構築しておくと、管理は格段に効率化されます。たとえばAI-OCR機能のついた文書管理システムであれば、ファイル内の「年月」「社員名」「部署名」の記載内容を読み取り、自動的に次のような属性が設定されます。

  • 年月:2024年6月
  • 部署:営業部
  • 社員名:佐藤

これにより、「2024年6月の営業部全員の勤怠表をまとめて出したい」といった検索条件で、必要なファイルを一括で抽出することができます。

5-3. 勤怠管理システムとの役割分担が鍵

重要なのは、「勤怠管理システムで記録・集計したデータを、文書管理システムで保存・検索・提出する」という明確な役割分担を設けることです。これにより、以下のような業務上のメリットが得られます。

【表6:勤怠管理システムと文書管理システムの役割比較】

項目 勤怠管理システム 文書管理システム
勤怠データの入力・集計
勤怠表の保存・検索
勤怠表の改ざん防止・証跡管理
監査用データ出力

このように、Excel出力からの取り込みによる連携は、技術的・運用的なハードルが低く、企業規模を問わず導入しやすい現実的な手法です。

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6.「文書管理システム導入プロセスの全体像と現場定着のための実践ステップ

勤怠表の紙・Excel運用による限界を感じ、文書管理システムの導入を検討する企業が増えています。しかし、いざ導入となると「現場の負担が大きいのではないか」「うちの業務にフィットするのか不安」といった声も少なくありません。

そこで本章では、実際に文書管理システムを導入する際の一般的なフローと、現場で起きる変化についてステップごとに解説します。「何から始めればよいのか」「どこでつまずきやすいのか」を理解しておくことで、導入をよりスムーズに進めることができます。

6-1. ステップ1:現状運用の棚卸と課題整理

導入の第一歩は、現在の勤怠表の管理方法や課題を可視化することから始まります。

  • 勤怠表の保管形態(紙・Excel・ファイルサーバなど)
  • 閲覧・編集権限の管理状況
  • 過去の監査対応にかかった時間やトラブル
  • 部署ごとの管理ルールのバラつき など

これらの情報を整理することで、「なぜシステムが必要か」「何を解決したいのか」という導入目的が明確になります。また、現場にとっての“痛み”を共通認識とすることで、導入時の協力も得やすくなります。

6-2. ステップ2:要件定義と製品選定

次に、整理した課題に対して、文書管理システムでどこまで対応すべきかを明文化する「要件定義」を行います。たとえば以下のような項目が検討されます。

  • 勤怠表の保管期間:最低5年間保存(労基法準拠)
  • メタデータ項目:社員名、年月、部署、締め状態など
  • 検索機能:フリーワード/項目指定検索の可否
  • アクセス制限:部署単位の閲覧範囲制御
  • ログ管理:誰がいつどのファイルを操作したかの記録

これらを踏まえたうえで、自社に合った文書管理システムの製品を比較・選定していきます。近年はクラウド型のサービスも多く、月額制で導入ハードルが低いものも増えています。

6-3. ステップ3:導入準備(ファイル整理・ルール策定)

システム導入の成功を左右するのが、「運用ルールの明確化」と「初期ファイルの整備」です。

  • 過去分の勤怠表(紙・Excel)をPDF化して取り込み
  • メタデータの設定ルール(ファイル名から自動抽出など)
  • 権限ロールの設計(人事、管理職、一般社員など)

特に紙からの移行の場合は、スキャナでの読み込みやOCR処理を伴うため、移行対象範囲を「直近3年分のみ」とするなど段階的な対応が現実的です。

6-4. ステップ4:運用開始と社内周知

システムが整備されると、実際の現場での運用がスタートします。このタイミングで重要なのが、「社員への使い方の周知」と「問い合わせ対応フローの整備」です。

  • 利用マニュアルや操作研修の実施
  • 社内ポータルへのFAQ掲載
  • 操作に関する問い合わせ窓口の設置(管理部など)

この段階では「検索の仕方が分からない」「データを見つけられない」といった声が出ることがありますが、ログの活用や導入支援ツール(ポップアップチュートリアル等)を活用することで早期の定着が期待できます。

6-5. ステップ5:運用定着と効果測定

運用開始から数カ月後には、次のような効果が徐々に可視化されていきます:

【表7:文書管理システム導入前後の変化】

観点 導入前(紙・Excel) 導入後(システム管理)
検索時間 1件あたり5〜10分 数秒〜30秒
紛失リスク 高い(人手管理、共有ミス) 低い(一元管理、自動バックアップ)
監査対応 書類収集に数日かかることも 数分で出力・提出可能
保管コスト 保管棚・倉庫代が必要 不要(クラウド保管)

これらの効果を定期的に評価し、必要に応じて運用フローの見直しや権限設定の調整を行うことで、継続的な改善が図られます。

7. まとめ

本記事では、紙やExcelで運用されている勤怠表の管理に潜む課題と、それを解決する手段としてのクラウド型文書管理システムの有効性について解説してきました。記入ミスや改ざんの追跡が難しい、保管が煩雑で検索に時間がかかる、監査対応が非効率といった問題に対し、文書管理システムがどのように実務を変えるのか、導入フローやセキュリティ対応とともに具体的に紹介しました。

7-1. 本記事の振り返りポイント

以下に、各章で取り上げた勤怠表管理における課題と、文書管理システム導入による効果を整理します。

【表8:勤怠表管理における課題と文書管理システム導入の効果まとめ】

観点 従来の課題 文書管理システム導入後の効果
記入漏れ・修正の追跡 手書き修正や上書き保存で履歴不明、改ざんの疑念が残る 修正履歴が自動記録され、操作ログでトレーサビリティを確保
保管・整理の手間 紙の保管場所が煩雑、Excelはフォルダ分散で検索が困難 一元保管で紛失を防止、属性検索により数秒で該当ファイルに到達
保存義務への対応 紙の劣化・散逸、提出までに日数を要する クラウドで5年分以上を安全に保存、監査時の即時出力が可能
セキュリティリスク アクセス制御が甘く、情報漏洩や改ざんリスクが高い IP制限・閲覧権限で閲覧範囲を制御、証跡管理で内部統制を強化
システム連携の柔軟性 勤怠システムとバラバラで二重管理、保存作業が煩雑 Excelエクスポートからの取り込みで運用を崩さず連携可能
導入負荷への不安 業務が止まるのではという懸念 段階導入と現行データ活用でスムーズに現場に定着

7-2. 今後の一歩:自社に合った勤怠表管理体制の見直しを

次のような兆候が見られる企業では、勤怠表の管理体制を見直すタイミングに来ているかもしれません。

  • 過去の勤怠表がすぐに見つからず、監査時に時間がかかった
  • 記録内容の修正履歴が分からず、説明責任を果たせなかった
  • 紙やExcelファイルが散在していて全体を把握できない
  • 各部署で異なる保管方法を採用しており、属人化が進んでいる
  • 勤怠管理システムからの出力ファイルがそのまま保管されていない

これらの課題は、業務効率だけでなく、法令順守や企業の信頼性に直結します。文書管理システムであれば、既存の勤怠表ファイル(Excel・PDF)を活用しながら、段階的かつ現場に負担をかけずに導入することが可能です。

勤怠情報は“記録”するだけではなく、“活用”し、“証明”し、“守る”フェーズへと進むべき時代です。
企業のコンプライアンス強化と業務効率化を同時に達成するために、今こそ、勤怠表のクラウド管理を前提とした新しい管理体制への一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。

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