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AX(AIトランスフォーメーション)とは?
DXとの違いと、現場の業務から始める進め方

#AI

「DXの次はAXだ」という言葉を、社内の会議や業界ニュースで耳にする機会が増えてきました。一方で、「AXとは何か」と改まって聞かれると、うまく説明できない方も多いのではないでしょうか。

AXはいま、国の成長戦略の中心に置かれた言葉です。ただし、そこで語られているのは「AIを導入しましょう」という話ではありません。むしろ、導入したのに成果が出ない企業で何が起きているかに議論の多くが割かれています。

この記事では、AXの意味とDXとの違いを整理した上で、多くの企業がつまずいているポイントと、現場の業務を起点とした進め方を確認します。読み終えたときに、自分の業務のどこから手をつければよいかが分かる状態を目指します。

1. AX(AI Transformation)の意味

AXとは「AI Transformation(AIトランスフォーメーション)」の略称で、読み方は「エーエックス」です。AI(人工知能)の活用を前提として、業務プロセスや事業のあり方そのものを組み替えていく取り組みを指します。

ポイントは、「AIツールを導入すること」自体が目的ではない点です。経済産業省とIPAがAXをテーマに設置した検討会※1でも、ただAIを使うことがAXなのではない、という点が繰り返し確認されています。

1-1. DXとの違い

AXとDX(デジタルトランスフォーメーション)は、しばしば混同されます。両者の関係は、「別のもの」というより段階の違いとして捉えるとわかりやすくなります。

IT化DXAX
主な取り組みアナログ業務のデジタル化デジタル技術による業務・事業の変革AIを前提とした業務・事業の再設計
具体例紙の書類をデータ化する業務データをクラウドで一元管理・共有する蓄積したデータをAIが分析し、予測や自動処理を行う

IT化・DX・AXの変革3段階をステップで示した図解

DXによって社内のデータがデジタル化され、蓄積されてきた企業は多いはずです。AXは、その蓄積されてきたデータを、AIによって業務の成果に変えていく段階と位置づけられます。DXが進んでいるほど、AXの土台は整っているといえます。

1-2. AI活用とAXの違い

もうひとつ混同されやすいのが、「AI活用」と「AX」です。

たとえば、生成AIにメール文面の下書きを手伝ってもらうのは「AI活用」です。個人の作業が速くなりますが、業務フロー自体は変わっていません。

前述の検討会※1は、この違いを3つの段階で整理しています。

段階生成AIの使われ方取り組みのイメージ
部分的な代替既存の業務プロセスはそのままに、一部を生成AIで置き換える議事録の作成を対話型AIに指示する
個別業務の高度化生成AIを前提に、個々の業務のやり方を組み替える自分の業務に合わせたAIエージェントを作って使う
組織横断の変革生成AIを前提に、組織やオペレーションそのものを見直すAIと人の分担をデザインし、組織構造を見直す

多くの企業が取り組んでいるのは一段目の部分的な代替です。そして検討会の資料は、そこから先に進めない理由を「技術の導入」ではなく組織の適応にあると指摘しています。AIは入れさえすればうまくいく魔法ではない、というわけです。

2. AXが注目される背景

AXという言葉がここまで広がった背景には、政策の動きと、日本企業が抱える構造的な事情があります。

2026年4月22日の第4回日本成長戦略会議で、経済産業大臣はAXを日本の産業の「勝ち筋」の根幹と位置づけました※2。戦略17分野すべての基盤がAXであり、日本の強みとして挙げられたのが、製造・医療・介護・災害対応といった現場のデータと産業ロボットを組み合わせるフィジカルAIです。現場データを使える形に整える「AIレディ化」や、中堅・中小企業へのAX導入加速も柱に並びました。一部のIT企業の話ではなく、現場を持つあらゆる産業の話として設計されています。

もうひとつが人手不足です。総務省統計局の「人口推計」によると、日本の生産年齢人口(15〜64歳)は1995年の8,716万人をピークに減少が続き、2024年10月1日時点で7,373万人となっています※3。国立社会保障・人口問題研究所の将来推計では、2040年には6,213万人まで減少すると見込まれています※4。「人を増やして業務を回す」という解決策は、多くの企業にとって現実的でなくなりつつあります。

加えて、DXで蓄積したデータが十分に活かされていないという事情もあります。クラウド化やペーパーレス化を進めてデータは溜まったものの、その分析や活用は担当者の手作業と経験に頼ったままという状態です。

3. AXでつまずく2つのパターン

では、AIを導入した企業はうまくいっているのでしょうか。検討会※1が企業から集めた実践知を見ると、成果が出ていない企業には共通した詰まり方があります。代表的な2つを紹介します。

3-1. 部分的な効率化で止まる「消える生産性」

議事録の作成、文章の校正、資料の要約。こうした部分的で単純な業務では、多くの企業がすでに効率化に成功しています。問題は、そこから先に進めないことです。理由として挙がったのは、AIを使ってどう業務プロセスを変えるかという設計スキルの不足でした。

結果として起きるのが、個々の作業は速くなったのに組織全体の成果が増えない状態です。検討会ではこれを「消える生産性」と呼んでいます。効率化で生まれた余力が、価値の乏しい資料や打ち合わせの増加に吸収されてしまう。ツールの利用率は上がったのに事業の数字が動かない、という心当たりがあるなら、原因は余力の使い道を決めていないことにあります。

3-2. 現場が消耗する「AI疲れ」

もうひとつが「AI疲れ」です。AIが下書きや調査を担うようになると、人間の側には判断・統合・レビューだけが残ります。作業は減っても意思決定の密度が上がり、認知的な負荷はむしろ増える。使いこなすほどマルチタスクが増える、ハルシネーション(もっともらしい誤り)を確認する工数が積み上がる、といった声も挙がっています。

AIを導入すれば現場が楽になる、とは限りません。誰がどこまで判断を担うのかを決めないままAIを導入すると、負荷の形が変わるだけで減らないという状態になってしまうのです。

4. 現場のAI活用を止めている壁:セキュリティとガバナンス

つまずきはもうひとつあります。そもそも現場がAIを使えていない、というケースです。検討会※1でも、社内の規制によって使える範囲に差が出ていること、日本企業はリスクへの恐れが大きく踏み出せていないことが課題に挙がりました。

AXが進まない最大の理由は、技術の不足ではありません。多くの現場を止めているのは、セキュリティとガバナンスをめぐる板挟みです。

4-1. 使いたい現場と、許可できない情シス

現場の社員には、「生成AIを使えば、この資料作成は半分の時間で終わるのに」という実感があります。実際、個人の生活ではすでにAIを使いこなしている人も多いでしょう。

一方、情シスや管理部門には許可できない事情があります。

  • 機密情報や個人情報が、社外のAIサービスに入力されてしまうかもしれない
  • 誰が、どのAIサービスに、何を入力したのかを把握する手段がない
  • 問題が起きたとき、責任の所在も対処の手順も決まっていない

どちらかが間違っているわけではありません。現場は生産性に、情シスは情報資産の保護に、それぞれ責任を負っているだけです。しかし、この状態を放置した結果として選ばれがちな「とりあえず全面禁止」という判断が、実は新たなリスクを生んでいます。

AIを使いたい現場担当者と、許可に慎重な情シス担当者が向き合うイラスト

4-2. 禁止が生む「シャドーAI」のリスク

利用を禁止しても、現場の「使えば速く終わるのに」という実感は消えません。その結果、何が起きるか。個人のスマートフォンや私用アカウントで、会社に隠れて生成AIを使う社員が現れます。こうした統制外のAI利用は「シャドーAI」と呼ばれ、会社が把握していないSaaS利用(シャドーIT)のAI版として問題になりつつあります。

これは一部の企業だけの話ではありません。ガートナージャパンが2026年6月に発表した国内企業調査(2026年2月実施)によると、シャドーAIを「把握できていない」企業が43%、「把握しているが、有効な対策を取れていない」企業が30%と、合わせて73%の企業がシャドーAIを有効に管理できていないことがわかっています※5。また、エルテスの実態調査(2026年1月)では、業務で生成AIを利用している会社員・公務員の約5人に1人が、会社の許可していない生成AIツールを使っている実態が報告されています※6。

シャドーAIの怖さは、許可制で統制された利用よりも、むしろ漏えいリスクが高いことにあります。

許可されたAI利用シャドーAI
入力内容の把握ログで確認できる会社からは見えない
アカウント管理会社が発行・停止できる私用アカウントのため関与できない
問題発生時の対応利用状況をたどって対処できる発覚まで時間がかかり、範囲も特定しにくい

つまり、「禁止すれば安全」ではないのです。見えない利用は、教育もルール整備も及ばない場所でリスクを溜め込んでいきます。

4-3. 検知と可視化から始めるガバナンス

では、どうすればよいのでしょうか。「全面的に許可する」と「禁止を徹底する」の二択ではなく、その手前に置くべきステップがあります。今、社内で実際にどんなAI・SaaSが使われているのかを可視化することです。前述のガートナージャパンも、単純な禁止ではなく、AIツールの利用実態を可視化した上で評価・承認・統制の仕組みを整備することを提言しています※5。

利用実態が見えれば、対応は具体的になります。よく使われているサービスから優先的に安全な利用ルールを整備する、リスクの高いサービスだけを個別にブロックする、会社公認の代替手段を用意する。いずれも、実態が分からないままでは打てない手です。

可視化の手段としては、SaaS管理ツールやIT資産管理ツール、CASBと呼ばれる製品群があります。すでに端末管理(MDM)やSaaS管理の仕組みを導入している企業であれば、新しく何かを買う前に、いま持っている仕組みで何が見えるかを確認するところから始められます。

5. AXの進め方:小さく始めるための3ステップ

最後に、自社でAXを始めるための進め方を整理します。大がかりな全社戦略から始める必要はありません。むしろ、小さく始めて確かめながら広げるほうが、現実的で失敗も小さく済みます。

ステップやることポイント
1. 利用実態の可視化社内でどんなAI・SaaSが、どの部署で、どれだけ使われているかを把握するシャドーAIの検知を含む。この可視化が、そのまま業務とツールの棚卸しになる
2. 業務でのスモールスタート問い合わせ対応や文書検索など、効果を測りやすい業務をひとつ選んで試す完璧なルールを待たず、範囲を区切って始める。無料枠や試用期間を使えば初期投資も抑えられる
3. 効果測定と横展開削減できた時間や対応件数の変化を記録し、次の業務へ広げる「消える生産性」を避けるため、生まれた余力を何に使うかも併せて決める

ひとつ注意点があります。フェーズを区切って進めると、最後の段階を意識しないまま時間だけが過ぎるケースが多い、という指摘が検討会※1で出ています。「まずこれを導入」で終わらせないために、目的から逆算して各ステップを置くことが求められます。

5-1. 先行企業に共通していた要素

検討会※1では、生成AIの活用率100%を達成した日立製作所北海道支社の事例が紹介されました。同社が挙げた要素は次の6つです。

  • トップのコミットメント
  • 効果的な推進体制
  • リーダーの育成
  • 失敗を許容する文化
  • 活用文化の醸成
  • コミュニティの形成

並べてみると、ツールの話がひとつも入っていません。これらが心理的安全性として働き、社員の自発的な活用につながったと説明されています。AXの成否を分けるのは、導入する製品よりも、使ってよいと思える空気をつくれるかという話です。

同社でも横展開の段階では部門間の格差が課題になり、全社一斉ではなく意欲の高い部署から広げる形をとりました。なお、AI活用のボトルネックはミドル層にあるケースが多いという指摘もあります。経験があるぶん、分からないことを周囲に聞きづらいためです。

6. まとめ

AX(AIトランスフォーメーション)とは、AIを前提に業務プロセスや事業を組み替えていく取り組みです。DXと変革の対象は変わらず、違いは「生成AIが動くことを前提に業務を設計するかどうか」にあります。

そして、AXでつまずく企業には共通したパターンがありました。部分的な効率化で止まり余力が消えていく「消える生産性」、判断だけが人に残る「AI疲れ」、そして、使いたい現場と許可できない情シスの板挟みです。いずれも、ツールを増やせば解決する問題ではありません。

  • 利用実態を可視化し、管理できる状態にしてから使えるようにする。
  • 生まれた余力を何に使うかを決めておく。

この順序であれば、現場の業務からAXを始められます。
まずは、社内で使われているAIツールを一覧にしてみるところから始めてみましょう。

オプティムでは、SaaS管理や端末管理、文書管理、AIチャットボット、遠隔サポートなど、企業のAXを支援する製品を提供しています。自社の状況を整理する際の選択肢のひとつとしてご覧ください。

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脚注・出典・参考情報

※1 経済産業省・独立行政法人情報処理推進機構「AX時代におけるスキルのあり方検討ワーキンググループ」第1回〜第3回(2026年4月21日/6月1日/6月23日)の議事要旨および事務局資料。
AXの定義案・段階整理は第2回事務局資料、企業の課題は同資料に収録された2026年5月22日開催ワークショップの結果、日立製作所北海道支社の事例は第3回資料3 議事要旨による。DXの定義は経済産業省「デジタルガバナンス・コード3.0」

※2 第4回日本成長戦略会議(2026年4月22日) 経済産業大臣提出資料

※3 総務省統計局「人口推計(2024年(令和6年)10月1日現在)」(2025年4月14日公表)。15〜64歳人口は7,372万8千人(総人口の59.6%)。1995年のピーク値8,716万人は内閣府「令和7年版高齢社会白書」による。

※4 国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(令和5年推計)」出生中位・死亡中位仮定による推計値。

※5 ガートナージャパン「国内企業のシャドーAI対応に関する調査」(2026年6月18日発表、調査は2026年2月実施)

※6 株式会社エルテス「生成AI利用実態調査」(2026年1月19日発表、会社員・公務員300名対象)

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