OPTiM お役立ち情報
公開日: 2025/9/4

給与明細は紙?従業員にも管理者にもやさしい電子保管法

1. 紙の給与明細は時代遅れ?今すぐ見直すべき5つの理由

「給与明細は、今も紙で配っている」――現在でも一定数の企業がそのような運用を続けています。しかし、テレワークの普及や人事・労務のDX化が進む中で、紙の給与明細の運用は時代にそぐわない方法になりつつあります。配布ミスや紛失リスク、再発行の手間、保管コストなど、紙運用における給与明細の管理にはさまざまな課題が潜んでいます。

本記事では、まず紙の給与明細運用が抱える具体的なデメリットから出発し、その後、電子化によってどのように課題を解決できるかを解説していきます。従業員にも管理部門にもやさしい、効率的な給与明細の保管方法を検討するうえでのヒントとなる内容です。

1-1. 配布ミス・紛失リスクが常につきまとう

紙の給与明細は物理的な「もの」であるがゆえに、取り扱いや運用に注意を要します。特に以下のようなリスクが現場で頻発しています。

  • 配布先の間違い:複数の従業員が在籍する部署では、給与明細を従業員に配布する過程で、人為的なミスによる誤配布が起こる可能性があります。これは個人情報の漏洩に直結する重大なインシデントです。
  • 配布後の紛失:手渡しや社内便で配布された紙の給与明細が、途中で紛失される例もあります。特に外勤やリモートワークの従業員には渡しづらく、未配布のまま放置されるケースも見受けられます。
  • 従業員の保管管理任せ:受け取った給与明細を各自が保管する運用では、本人の管理能力に依存するため、退職後に必要になった際に「見つからない」というトラブルが発生します。

このように、紙媒体を使った給与明細の運用では、複数の工程で人的ミスやトラブルが起きやすく、給与明細の管理精度維持が困難です。

1-2. 再発行や保管対応が人事部門の大きな負担に

紙の給与明細は一度配布した後の管理もまた大きな負担となります。代表的な課題は以下の通りです。

  • 保管スペースの確保が必要:毎月配布される給与明細を数年間分まとめて保管するとなると、キャビネットや倉庫の保管スペースが圧迫されます。給与明細の作成にかかわる書類も保管することを考えると、企業にとっても物理的な負担です。
  • 再発行依頼への対応が煩雑:「住宅ローンの審査に使いたい」「年金申請に必要」などの理由で、過去の給与明細の再発行を求められるケースがあります。しかし紙での運用では、該当月の原本を探し出し、再印刷・再封入・再送付という手間が必要です。
  • 本人確認や郵送対応の手間:特に退職者からの再発行依頼では、本人確認の手間や郵送コストも発生します。繁忙期の総務・人事担当者にとっては大きな業務負荷になります。

【表1:紙の給与明細運用における課題一覧】

項目 内容
配布ミスのリスク 手渡し・社内便での誤配布、個人情報漏洩の危険
紛失の可能性 配布途中や本人の保管ミスによる紛失
保管スペースの圧迫 数年分の紙書類の物理的保管が必要
再発行対応の手間 過去明細の検索・再印刷・封入・郵送に時間と人手が必要
コスト 印刷費、封筒代、郵送費、人件費などのコストが積み重なる

このように、紙の給与明細運用は従業員にとっても管理者にとっても「わずらわしさ」と「ミスのリスク」がつきまとう非効率な方法だと言えます。業務効率の改善や情報セキュリティの観点からも、見直しが求められています。

2. 給与明細を紙で配るコストと手間の全貌とは?

紙の給与明細を用いた運用は、表面上は「これまで通り」「簡単な方法」と見えるかもしれません。しかし、その裏側では膨大な手間とコストが発生しており、企業の管理部門にとって見過ごせない負担となっています。本章では、配布・再発行・保管それぞれの観点から、紙運用に伴う具体的なコスト構造を詳しく解説します。

2-1. 印刷・封入・郵送の積み重ねでコスト増

紙の給与明細の配布には、印刷・封入・配布といった一連の業務が必要です。社内配布であっても、部署ごとの仕分けや手渡し対応には人手がかかります。さらに、以下のようなケースでは郵送対応が必要になり、そのたびにコストが発生します。

  • 地方勤務・出向者・在宅勤務者への郵送
  • 産休・育休中の従業員への送付
  • 拠点をまたぐ複数拠点展開企業の本社からの一括配布

【図1:給与明細配布にかかる業務とコスト構造】

これらの工程を毎月繰り返すことで、年間数十万~数百万円規模のコストが発生する企業も存在します。特に社員数が多い企業ほど、給与明細の管理にかかる目に見えないコストは膨らみやすくなります。

2-2. 再発行対応にかかる時間と業務不可の実態

紙で運用していると、従業員や退職者からの「過去の給与明細が欲しい」という問合せ対応にも時間がかかります。具体的には、以下のような対応が必要になります。

  1. 人事部門で過去の明細ファイルを紙の保管庫から探し出す
  2. 原本またはコピーを印刷し、封入
  3. 本人確認を行ったうえで郵送、または社内便で再送

この一連の流れは、1件の対応で30分~1時間ほどの工数が発生することもあります。さらに、対応内容を記録に残したり、問い合わせが集中する時期(年末調整、確定申告前など)には対応が追いつかず、管理部門の業務効率が著しく低下します。

【表2:紙の給与明細運用に伴う主な手間とコスト】

項目 内容
印刷・封入の手間 毎月発生。全社員分を対応するため時間と人手が必要
郵送コスト 1通あたり84円以上(2025年現在)。全社員分で数万~数十万円規模
過去明細の再発行 保管庫からの検索・再印刷・再封入・再送。1件ごとに30分以上かかる場合も
保管スペースの確保 紙書類のため、オフィスのキャビネットや倉庫を圧迫
業務の負担・ヒューマンエラー 問合せ対応中の誤送付、対応漏れ、ミスによる個人情報漏洩リスク

このように、紙の給与明細運用は配布・再発行・保管のあらゆるフェーズで「目に見えるコスト」と「見えにくい時間的負担」の両方を発生させます。企業にとっては、コストだけでなく情報漏洩などのリスクも抱えることとなり、運用の見直しが強く求められる状況です。

3. 文書管理システムで給与明細を個人別に安全配信

紙の給与明細では管理や配布、保管に多くの課題が伴うことを前章で見てきました。こうした課題を一気に解消できる手段が、「文書管理システム」の導入です。文書管理システムを活用することで、社員ごとに給与明細を安全かつ効率的に管理することが可能になります。

実際にどのような文書管理ツールがあり、それぞれの違いや特徴を比較したい方は、👉 【2025年版】おすすめのドキュメント管理ツール16選|機能比較と選び方ガイドもぜひご覧ください。

本章では、その代表的な機能と導入効果を具体的に解説します。

※日本では電子給与明細の運用には所得税法・労働基準法施行規則上、従業員からの書面による同意が必要で、同意が得られていなければ紙での交付を続ける必要があるとされています。同意を得られた場合も、従業員から紙での発行を求められた場合には対応する義務があります。

3-1. 社員ごとに安全に閲覧・検索可能

文書管理システムの最大の特徴のひとつが、社員一人ひとりに対して「個人専用の閲覧権限」を設定できる点です。従業員は自分のアカウントでログインし、配信された給与明細をいつでもオンラインで確認できます。具体的には、以下のようなメリットがあります。

  • 配布作業の廃止:給与明細はシステム内に格納されるため、紙の配布や郵送が不要になります。
  • 24時間アクセス可能:社員はPC・スマホからいつでも自分の明細を確認でき、紙の紛失や保管の心配もなくなります。
  • 検索性の向上:過去数年分の給与明細も、年度や月で簡単に検索・閲覧できるようになります。

これにより、社員にとっての利便性が飛躍的に高まり、「明細が届いていない」「再発行してほしい」といった問い合わせ件数も大幅に減少、管理不可の軽減につながります。

【図2:文書管理システムでの給与明細閲覧フロー】

3-2. アクセスログと制限でセキュリティも強化

セキュリティの観点からも、文書管理システムは高い信頼性を持っています。給与明細は個人情報を含む機密文書であり、誤って第三者に閲覧されることは絶対に避けなければなりません。

文書管理システムでは以下のような機能によって、セキュリティを担保しながら確実に管理できます。

  • ログイン制限:社外IPからのアクセス制限や、特定端末以外からのログイン制限を設定可能
  • 多要素認証:パスワードだけでなく、スマホ認証などを組み合わせて不正ログインを防止
  • アクセス履歴の記録:誰が・いつ・どの給与明細にアクセスしたかを自動で記録し、監査にも対応

【表3:文書管理システムによる個人別給与明細管理の機能一覧】

機能 内容
閲覧制限の設定 本人のみ閲覧可能。他者の給与明細は非表示
検索機能 年月・種別でのフィルタ検索により目的の明細をすぐに特定できる
アクセスログ記録 アクセス日時・ユーザーID・操作内容を自動記録し、不正利用を監視
多要素認証対応 パスワードに加えてSMS認証などを活用し、セキュリティ強化
IP制限 指定環境外からのアクセスを制限可能

このように、文書管理システムを活用すれば、給与明細の配信・閲覧・保管をすべてセキュアに、かつ効率的に管理できます。従業員の利便性を高めつつ、管理部門の工数も削減できるため、コストパフォーマンスの高い運用が実現します。

OPTiM 文書管理の製品ページへ

4. 勤怠・人事システムとの連携でさらに効率化

給与明細の電子管理を進めるうえで、さらに効率化と省力化を実現する方法として注目されているのが、勤怠システムや人事給与システムとの連携です。単にPDFの給与明細を文書管理システムに保存するだけでなく、既存の基幹システムとつなげることで「明細発行から保管」までをシステム上で完結させることができます。文書管理システムにはこのような連携機能が提供されているものがあり、自社の業務フローに最適なシステムを選定することでさらなる効率化が実現できます。

この章では、勤怠・人事システムとの連携による代表的なメリットと、実現できる運用フローについて詳しく解説します。

4-1. 明細発行と同時に自動保管される仕組みとは?

人事給与システムと文書管理システムを連携させると、給与計算が確定した時点で生成された給与明細を、そのままPDF形式で保管できます。この仕組みにより、明細発行後に別途ファイルを出力してアップロードするといった二重の作業が不要になります。

たとえば、給与システム側で月次の明細を確定させると、出力されたPDFがそのまま文書管理システムに保存されるよう設定できます。結果として、人事担当者は「出力して保存する」工程を意識することなく、給与明細を確実に格納することが可能になります。

【図3:給与明細の発行から保管までの連携フロー】

このような連携により、給与明細を人手に頼らず正確かつ確実に管理することができます。特に社員数が多い企業にとっては、月末・月初の業務負荷を大幅に軽減できるのが大きなメリットです。

4-2. 給与明細PDFを一括格納して業務を大幅に効率化

もう一つの重要な利点は、「一括格納」が可能になることです。給与明細をPDFで出力する場合、明細ファイルが数十〜数百にもなることは珍しくありません。このとき文書管理システム側に一つずつ登録する運用では、担当者の工数が大幅に増える要因となります。

文書管理システムの多くは、「一括アップロード機能」を備えており、アップロード時に一括で保存期間の設定やアクセス権限の設定が可能です。

【表4:システム連携による給与明細管理の効率化ポイント】

項目 内容
明細発行との連携 給与計算の確定と同時に明細PDFをシステムに保存
二重作業の排除 出力・アップロード作業を一本化し、業務の簡素化を実現
一括格納による作業短縮 多数のファイルをまとめてアップロードでき、業務負担を軽減
情報漏洩リスクの抑制 セキュアな環境下での保管・閲覧により、高い安全性を確保

このように、勤怠・人事システムと文書管理システムを連携させることで、給与明細の保管業務が大幅に効率化され、ヒューマンエラーのリスクも抑えられます。日常的に行われる業務ほど、こうした自動化と省力化の恩恵は大きく、結果として全社的な業務改善にもつながります。

5. 文書管理システム導入の進め方と社内定着のポイント

文書管理システムを導入して給与明細の電子化を進めるには、単にシステムを購入するだけでは不十分です。スムーズな運用と社内定着を実現するには、配布フローの見直しや社員への周知、そして運用ルールの整備が不可欠です。

この章では、文書管理システムによる給与明細電子管理を実現するまでの基本的な導入ステップと、現場が混乱しないためのポイントについて解説します。

5-1. 配布フローの再設計と運用ルールの整備

まず必要なのは、これまでの紙による配布・保管業務をゼロベースで見直すことです。従来のフローでは、給与計算後に明細を印刷し、封入して各部署に届けるという一連の流れがありましたが、システム導入後はすべてがデジタルに置き換わります。

そのため、以下のような見直しが求められます。

  • 給与計算後のデータ出力手順を明確にする
  • 文書管理システムへの格納方法を定義する
  • 社員が閲覧開始できるタイミングと通知手段を決める
  • 再発行・修正時の対応フローを整備する

とくに、誰がどの段階で責任を持つのか(例:人事担当者、システム担当者など)を明確にしておくことで、トラブルを防ぎ、円滑な管理体制を構築できます。

【図4:給与明細電子化に伴う配布フローの変更イメージ】

5-2. 社員への周知・マニュアル整備でスムーズ導入

システム導入が成功するかどうかは、現場の理解と定着にかかっています。特に、給与明細の閲覧方法が紙から電子へ変わることに戸惑う社員もいるため、丁寧な周知とサポート体制の構築が重要です。

  • 導入背景やメリットをわかりやすく伝える
  • 導入スケジュールを明示する
  • 閲覧方法・ログイン手順を明記した操作マニュアルを配布
  • 操作に関する問い合わせ窓口を設置する

初めて文書管理システムを使う社員にとっては、システムへのログインやPDF閲覧も不慣れな操作となる場合があります。そのため、紙ベースの案内資料や社内説明会の開催、イントラ上での操作動画の共有など、多角的な周知施策が必要です。

また、導入時には、従業員の電子交付への同意取得が不可欠です。同意しない従業員には紙明細の提供が必要であり、個別運用を考慮する必要があります。同意した従業員についても、紙での発行を希望した際には紙明細の提供が必要であり、印刷の環境整備も行う必要があります。

【表5:システム導入時に行うべき準備事項一覧】

項目 内容
従業員の同意取得 従業員の電子交付への同意取得が不可欠
配布フローの再設計 現在の業務を棚卸しし、新しいシステム運用に最適化
権限設定とセキュリティ確認 閲覧制限やアクセス制御の設定を事前に整備
操作マニュアルの作成 社員向けの操作説明書やFAQを準備
社内向け説明・告知 周知用メール、掲示物、社内説明会などを活用して社員に丁寧に説明
問い合わせ対応体制の整備 初期対応窓口やトラブル時のエスカレーションルートを明確に

このような準備を経ることで、単なるシステム導入にとどまらず、社内に根付いた給与明細の電子管理運用が実現できます。特に社員への信頼感を損なわないためにも、「使い方がわからない」「明細が見られない」といったトラブルを事前に防ぐ工夫が求められます。

6. まとめ:給与明細電子化で業務効率とセキュリティを両立

本記事では、給与明細の電子管理によって、配布・保管・再発行といった従来の課題をいかに解決できるかについて、文書管理システムの具体的な活用方法と導入手順を通じて解説してきました。紙による配布に伴うミスや手間、コストの増大といった根本的な課題に対し、電子化がどのように現場の業務を変えるのかを、ステップごとに紹介しました。

6-1. 各章のポイント振り返り

以下に、各章で取り上げた要点を一覧で整理します。

【表6:給与明細運用における課題と電子管理による改善効果まとめ】

観点 従来の課題 電子管理による効果
配布 手渡し・郵送による誤配布、紛失リスク システムで確実・安全に管理。配布ミスや紛失の心配がない
保管 紙の保管スペースが必要、検索性が低い クラウド上で一元管理。いつでもどこでもアクセス可能
再発行対応 過去明細の検索・印刷・封入・郵送に多大な工数 社員自身が必要な明細を即座にダウンロード可能
セキュリティ 閲覧制限が曖昧 ログイン制御・アクセス履歴管理により情報漏洩リスクを抑制
システム連携 給与計算システムと切り離され、手作業が多い 発行後すぐに文書管理システムにPDF格納。運用負担を削減

6-2. なぜ給与明細管理は今、見直されているのか?

働き方改革やテレワークの浸透により、従来の紙運用は限界を迎えつつあります。以下のような背景が、給与明細を電子で管理する必要性を高めています。

  • 社員の勤務形態が多様化し、紙での配布が困難になってきた
  • 郵送・印刷コストが年々負担になっている
  • 情報漏洩や誤配布といったセキュリティリスクへの配慮が求められている
  • SDGsやペーパーレス化の潮流に企業が対応し始めている

一方、文書管理システムの進化によって、給与明細の電子配布は“特別な仕組み”ではなく、“誰でも使える標準的な選択肢”となってきました。従業員にとっても「いつでも確認できる」「過去分をすぐ探せる」という利便性は大きな価値になります。企業としても、業務の効率化・コスト削減・コンプライアンス強化といった多面的なメリットを享受できるのです。

6-3. 今後の一歩:自社に合った配布・管理体制の見直しを

次のような状況がある企業は、給与明細の電子化を検討するタイミングかもしれません。

  • 明細配布作業が属人化し、特定の担当者に業務が集中している
  • 過去の給与明細の再発行依頼が多く、対応に追われている
  • 紙の保管スペースが逼迫し、年次ごとに破棄作業が発生している
  • 外勤・在宅社員への郵送が負担となっている
  • セキュリティ対応(誤配布・漏洩リスク)に不安を感じている

文書管理システムは、現状の給与明細出力フローやPDFデータを活用しながら導入可能であり、従来の運用のすべてを変えなくても段階的な運用ができます。まずは一部部署・対象者を限定して試験導入し、フィードバックをもとに全社展開するアプローチも有効です。

給与明細の管理は、社員の信頼やコンプライアンスにも関わる重要な業務です。電子化によって効率性と安全性を両立させ、自社に合った運用スタイルを見つけていきましょう。持続可能な人事労務基盤の構築に向けた有効な一歩です。

「OPTiM 文書管理」に関するお問い合わせはこちら