エッジAIとは、2020年代初頭から注目され、現在では製造業・医療・モビリティ・インフラ管理など幅広い分野で導入が進んでいる技術の1つである。
全てのデータをクラウドで処理するのではなく、ネットワークのエッジ(末端)で情報処理を行うものだ。利点としては、爆発的に増加する大量のデータを高度に低消費電力で処理できることである。
こちらの記事では、エッジAIについて解説していく。
1. エッジAIとは何か?
エッジAIとは、AIとエッジコンピューティングを合わせて作られた造語である。
手元にあるスマートフォンなどの端末に搭載されたAIが情報を解析したり、学習することでクラウド型より高速に処理を行うことができる。
エッジAIには2つのタイプがあり、目的によって使い分けられる。
1つ目のタイプは、エッジAIが推論だけを行って、データやモデルの更新はクラウド上で行うもの。もう1つのタイプは完全独立型で、推論と学習の両方をエッジAI上で行い、クラウドとの接続を必要としないものだ。
ディープラーニングなどで機械学習を行う際、一般的にはエッジAI側で推論を行ってクラウドに接続してモデルの学習を行う形が多い。
エッジAIのメリット
エッジAIを搭載することによりどのようなメリットがあるだろうか。
エッジAIは端末に搭載されるAIなので、インターネットがつながらない環境や、リアルタイムでの処理に強みを発揮する。
具体的なメリットとしては、
- エッジAIによるリアルタイムな応答
- エッジAIが送信する情報を選別するのでクラウドとの通信コストを節約できる
- インターネットに繋がらなくても処理ができるのでセキュリティの向上
などが挙げられる。
こうしたメリットから、エッジAIを搭載するデバイスの候補としては、スマートフォン、カメラ、スマートミラー、プロセッサーなどがある。
2. 従来のクラウド型AIとエッジAIの違いとは

クラウド型AIとエッジ型AIの違いについて説明する。
クラウド型は手元にある端末からインターネットを通じてクラウドにアクセスして処理を行う。対してエッジ型は手元にある端末や、近くにある無線の基地局などで処理を完結させることができる。
エッジAIは、クラウド型サービスの普及によって生じた課題を解決できる技術として注目されている。
インターネットの通信が安定しない場合、クラウド型サービスは使えなくなってしまうことがあるが、エッジAIは端末側で情報を処理できるので場所や通信環境に依存することがなくなる。
また、セキュリティの面でクラウドにアップしたくないデータも企業を中心に存在する。
インターネットを経由するクラウド型サービスは、どうしても通信の際に情報漏えいのリスクがつきまとってしまう。
エッジAIなら端末だけで情報処理を完結できるので、リスクを減らすことができる。
3. エッジAIの活用状況
エッジAIは、自動運転や自律型ドローン、物体認識や検品などの分野で既に活用が進んでおり、今後さらに普及が見込まれている。
例えば自動運転では、車が走行する時に外部からもたらされる情報を処理するためエッジAIは利用される。カメラやセンサーが取得したデータをリアルタイムで高速に処理し、車両を制御しているのだ。
より高速な情報処理を実現するため、各企業は人材育成やソフトウェア開発などのソフト面に加え、高速処理を可能にするAIチップやメモリの開発といったハード面にも力を入れている。
GoogleやAmazonなどのクラウド大手は2020年代初頭からエッジAI対応を本格化し、2025年現在では標準的な選択肢となっている。
従来のクラウド型AIとエッジ型AIを組み合わせて良いところを活かすことで、これまでよりさらに高速で革新的なサービスが生まれると考えられている。
4. 世界的に期待されるエッジAI技術
IoT時代の到来により、エッジAI技術への注目が高まっている。手元での早い反応を求められるIoT機器において、求められる処理を行うためにエッジAI導入が進んでいる。
自動運転技術をはじめとして、世界的に展開していく分野においてエッジAIの導入が加速している。同時に、AI人材の育成は引き続き重要課題であり、官民連携による教育プログラムや認定制度の整備も進んでいる。
エッジAIは、リアルタイム処理とセキュリティ強化を両立できる技術として、今後ますます多くの分野での活用が期待されている。