OPTiM お役立ち情報

インバウンド急増と人手不足で深刻化するオーバーツーリズム
2026年の今必要な対策とコロナ禍前との違い

この記事でわかること

  1. オーバーツーリズムの意味と、インバウンド増加との関係
  2. 観光地で実際に起きている問題と、その原因
  3. コロナ禍前に起きていた議論との違いと、いま対策の焦点がどこにあるか

訪日外国人旅行者の数は年々増え続け、2025年には過去最高を更新しました。観光は地域経済を支える大きな柱である一方、観光客が特定の場所に集中することで、住民の生活や観光地そのものに負担がかかる状況も生まれています。これが「オーバーツーリズム」です。

本記事では、オーバーツーリズムとは何かという基本から、インバウンド増加を背景に何が起きているのか、そして国内の観光地でどのような対策が進められているのかを整理します。併せて、対策を考える上で欠かせない「実態の把握」という視点についても解説します。

1. オーバーツーリズムとは

1-1. オーバーツーリズムの定義

オーバーツーリズム(overtourism)とは、観光地が受け入れられる許容量を超えて観光客が集中し、地域住民の生活や自然環境、観光体験の質に悪影響が及んでいる状態を指します。2016年に旅行業界向けメディアが用いたことで広まった言葉です。

日本では「観光公害」と呼ばれることもありますが、近年の政府文書や報道では「オーバーツーリズム」の表記が主流になっています。

重要なのは、観光客が「多い」こと自体ではなく、地域が対応できる範囲を超えたときに問題になるという点です。同じ人数でも、交通機関や宿泊施設、道路といった受け入れ側の容量が十分であれば、混雑としては表面化しません。

1-2. インバウンドとは

インバウンドとは、外国から日本へ来る旅行のこと、またはその旅行者を指す言葉です。「訪日外国人旅行」とほぼ同じ意味で使われます。反対に、日本から海外へ出かける旅行は「アウトバウンド」と呼ばれます。

このインバウンドの急速な回復と拡大が、いま国内でオーバーツーリズムが注目されている大きな背景になっています。コロナ禍で一時ほぼ途絶えた訪日需要が数年のうちに以前を上回る水準まで戻った一方、人材不足で受け入れ体制が追いついていないためです。同じ問題が起きた2018〜2019年とは状況が異なり、この違いは第4章で整理します。

2. インバウンド増加の現状とオーバーツーリズムの原因

2-1. 訪日外国人旅行者数と消費額は過去最高を更新

2026年7月に閣議決定された「令和8年版観光白書」によると、2025年の訪日外国人旅行者数は4,268万人(前年比15.8%増)、訪日外国人旅行消費額は9兆4,549億円(同16.4%増)となり、いずれも過去最高を記録しました。

項目 2025年実績 前年比 2030年の政府目標
訪日外国人旅行者数 4,268万人 15.8%増 6,000万人
訪日外国人旅行消費額 9兆4,549億円 16.4%増 15兆円

政府はさらなる拡大を目標に掲げており、訪日客の増加は今後も続くことが見込まれます。

同時に、対策への投資も動き始めています。2026年7月1日から国際観光旅客税が3,000円に引き上げられ、これにともなう関連予算は前年度の490億円から1,300億円へと大幅に拡大しました。白書では、この財源を地方誘客の推進とオーバーツーリズムの未然防止・抑制に重点的に充てる方針が示されています。

※出典:観光庁「令和8年版観光白書」(2026年7月)

2-2. 訪問先が特定の地域に集中している

見落とされがちなのが、訪日客の行き先が偏っているという点です。外国人延べ宿泊者数のおよそ7割が三大都市圏に集中しており、地方部は3割程度にとどまっています。

集中を強める要因として、SNSの影響は無視できません。写真映えするスポットの情報が瞬時に世界へ拡散し、これまで観光地として想定されていなかった小規模な場所にも人が押し寄せるケースが増えています。

全国に均等に4,268万人が分散していれば、混雑はここまで問題にならなかったはずです。オーバーツーリズムを引き起こしているのは総数そのものではなく、場所と時期の偏りだといえます。

2-3. 円安も集中の要因となっている

加えて、円安の影響も見逃せません。日中摩擦などの影響で中国からの団体客が一時的に落ち込む局面でも、円安の影響により観光しやすい国として、欧米豪や他のアジア圏からの旅行者がそれを上回って増加し、全体の数は高止まりを続けています。この変化は、人数の構成にも表れています。2025年の旅行消費額を国籍・地域別に見ると、従来から日本での支出が最も大きかった中国(2兆58億円)が前年比16.2%増にとどまる一方、ドイツは57.7%増、ベトナムは49.6%増、インドは39.8%増、イタリアは33.5%増と、伸び率で中国を大きく上回りました。1人当たりの旅行支出でもドイツが39.2万円で最も高く、中国(24.7万円)は前年から10.9%減っています。単価の高い欧州や、伸びの大きい新興アジアからの支出が積み上がる形になってきています。特定の市場の増減だけでは総数が下がりにくい構造になっている点も、混雑が常態化している理由の一つです。

※出典:観光庁「インバウンド消費動向調査 2025年暦年の調査結果(確報)の概要」(2026年3月31日)

3. オーバーツーリズムによって生じる主な問題

3-1. 交通機関の混雑と住民生活への影響

最も分かりやすい影響が、公共交通機関の混雑です。観光客でバスや電車が満員となり、通勤・通学や買い物といった住民の日常的な移動が困難になる事態が各地で起きています。

観光地では、大きな荷物を持った旅行者が乗降に時間を要することで運行が遅れ、それがさらなる混雑を招くという連鎖も起こります。道路においても、観光バスやタクシーの増加による渋滞、路上駐停車による通行の妨げが問題となっており、影響は交通機関の内部にとどまりません。

3-2. マナーやルールをめぐるトラブル

私有地への無断立ち入り、路上での撮影による通行の妨げ、ごみの投棄、深夜の騒音といったトラブルも報告されています。文化や習慣の違いから生じるケースもあり、周知の方法が課題となっています。

多くの場合、こうした行為は悪意によるものではありません。その土地のルールや暗黙の了解を知らないまま行動した結果として起きています。そのため、罰則を設けるよりも、どこでどのような行動が問題になっているかを把握した上で、看板の設置場所や案内の内容を見直すほうが効果的なケースもあります。

3-3. 環境や景観への負荷

自然環境が観光客の集中によって傷つく例もあります。登山道の荒廃、ごみの増加、混雑による安全面のリスクなど、その土地の魅力そのものが損なわれかねない状況です。

観光地にとって、自然や景観は集客の源泉でもあります。それが失われれば、長期的には観光客の減少につながります。目先の来訪者数を追うことが、結果として地域の観光資源を消耗させてしまうという構造が、オーバーツーリズムの難しさを表しています。

3-4. 観光客と地元事業者、双方への影響

オーバーツーリズムは、観光客自身にとっても不利益をもたらします。 長い待ち時間や過度な混雑は満足度を下げ、再訪の意欲を削ぎます。

観光地で働く事業者の負担も見過ごせません。人手不足が業界全体に広がるなか、飲食店や小売店では、繁忙時間帯に対応が追いつかず、閑散時間帯には人員を持て余すという需要の波への対応が課題になります。人を増やして解決できないなら、限られた人員をいつ・どこに配置するかの判断が、これまで以上に重要になります。

特に難しいのは、この波が読みにくいという点です。天候やSNSでの拡散、近隣施設のイベントなど、複数の要因で来客数は大きく変動します。過去の経験則だけでは対応しきれず、結果として機会損失と人件費の無駄が同時に発生してしまう状況も生じています。

4. コロナ禍前の議論と、いま起きているオーバーツーリズムの違い

4-1. 2018〜2019年に起きていた一度目の波の特徴

「オーバーツーリズム」という言葉が日本で広く使われるようになったのは、実は今回が初めてではありません。訪日外国人旅行者数が3,000万人を超えた2018〜2019年頃、京都や鎌倉などで混雑やマナーをめぐる問題が相次ぎ、「観光公害」という言葉とともに大きく取り上げられていました。

一度目の波の特徴は、大きく3点に整理できます。第一に、問題が起きた場所が京都や鎌倉、富士山といった、もともと知名度の高い主要観光地に集中していたことです。第二に、混雑の中身が、宿泊施設や路線バスといった設備の容量に対して来訪者が多すぎるという、受け入れ容量の不足として語られていたことです。そして第三に、対策がまだ検討と体制づくりの段階にあったことです。観光庁は2018年6月に「持続可能な観光推進本部」を設置し、2019年6月に報告書「持続可能な観光先進国に向けて」をまとめていますが、入山料や人数制限といった具体的な規制が各地で実行されるところまでは進んでいませんでした。

そして、この一度目の波は、コロナ禍(2020〜2022年頃)で訪日需要がほぼ途絶えたことにより、いったん強制的に解消されました。この間の議論は目の前の混雑ではなく、「アフターコロナで以前の過密状態に戻さないために何をすべきか」という予防が中心でした。混雑そのものが消えていた数年間を挟んだことで、第1波で積み上がりつつあった対策の議論も、いったん止まった形になります。

※出典:観光庁「観光庁に『持続可能な観光推進本部』を設置しました」(2018年6月18日)

4-2. いま起きているのは「予防」ではなく「対処」の段階

2026年の現在地は、第1波の時ともコロナ禍の予防議論の時とも異なります。懸念されていた事態がそのまま現実になり、議論の中心は将来の予防から、目の前の生活問題への対処と規制へ移りました。第1波では検討や協議の段階にとどまっていた打ち手が、いまは料金や人数制限として実際に運用されています。

富士山では2025年から、山梨・静岡両県の全4ルートで入山料が1人4,000円に統一され、事前登録制と午後2時から翌午前3時までの入山規制(山小屋宿泊者を除く)が実施されました。山梨県側では1日当たりの登山者が4,000人を超えるとゲートを閉鎖する運用も設けられています。京都市は2024年6月から主要観光地のみに停車する「観光特急バス」を運行し、住民の生活路線との住み分けを図りました。2026年3月には宿泊税も引き上げられ、宿泊料金に応じた最高額は1万円となっています。

かつて「そうならないように」と語られていたことが、いまは「すでにそうなっているから止める」という文脈で報じられている。この違いが、オーバーツーリズムが再び話題化している理由の一つです。

4-3. 大きな違いは、受け入れ側の「人手不足」

コロナ禍前の第1波と今を分けている要因の一つが、観光客の数ではなく受け入れ側の体制です。水際対策の緩和と円安による割安感で需要が急回復した一方、バスやタクシーのドライバー、ホテルや飲食店のスタッフといった観光を支える人材の確保が追いついていません。帝国データバンクの調査では、2026年4月時点の正社員の人手不足割合は50.6%と前年同月(51.4%)から0.8ポイント低下し、これまで上位にランクしていた「飲食店」「旅館・ホテル」も改善傾向にあるとされています。とはいえ水準そのものは高く、非正社員では2025年10月時点で「旅館・ホテル」が59.0%と業種別で最も高い水準にありました。

ここには、コロナ禍で需要が消えていた数年間に、観光関連の人材が他業種へ流出したという背景もあります。同じ人数の観光客が訪れても、対応できる人員が減っていれば、それは混雑として表面化します。1-1で触れた「受け入れ側の容量」が、需要の側ではなく人手の側から削られている状態です。これは観光客の総量を規制しても解消しない問題であり、受け入れ体制が整っていた第1波の時点では、ここまで大きな論点にはなっていませんでした。需要の回復に人員が追いつくかどうかは、地域や業種で差が残ります。

※出典:帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査(2026年4月)」(2026年5月19日)

※出典:帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査(2025年10月)」(2025年11月17日)

4-4. 第1波と今で、何が変わったのか

コロナ禍前の第1波との違いを整理すると、次の4点にまとめられます。

  1. 混雑の場所:主要観光地の混雑から、SNSで話題化したスポットへの局所集中も加わった
  2. 客層と消費:中国の団体客が中心だった構図から、欧米豪や新興アジアへ分散し、特定市場の増減では総数が下がりにくい構造へ
  3. 制約の所在:宿泊施設や交通の容量不足から、人手不足による受け入れ側の供給制約へ
  4. 打ち手の段階:検討会や計画づくりの段階から、入山料・人数制限・課税といった実行段階へ

この4点はいずれも、「観光客を増やすか減らすか」という問いでは答えが出ないものです。需要はすでに高止まりしており、それを生むSNSや為替の動きを地域の側から止めることはできません。一方で、不足している人手を短期間で増やすこともできません。

そうなると、残る問いは一つです。限られた人員と設備で、いつ・どこに人が集まるのかを、どれだけ正確に把握できるか。かつての議論が「総量をどう押さえるか」だったのに対し、いま必要なのは「目の前の実態をどう捉え、どう動くか」です。次章では、この「捉える」という発想に対策の焦点が移っている理由と、それによって何が変わるのかを見ていきます。

5. 集中を「見る」と、何が変わるのか

5-1. 集中を生む原因も、受け止める体制も、短期では動かせない

オーバーツーリズムの本質が総数ではなく集中にあるとすれば、まず整理しておきたいのは「なぜ集中するのか」です。ここまで見てきたとおり、その要因はSNSでの拡散であり、円安であり、世界的な旅行需要の高まりでした。そして、そうして生まれた集中を受け止める側には、4-3で見た人手不足という、短期では埋められない制約があります。集中を生む原因も、それを受け止める体制も、どちらも短期には動かせないということです。

問題は、そのどちらも、受け入れる側の地域や店舗からはすぐには動かせないという点です。 ある場所がSNSで話題になるのを止めることはできませんし、為替を動かすこともできません。原因を断つという発想では、打てる手がほとんど残らないのです。

だからこそ、順番が変わります。原因を止められないなら、「いま実際にどうなっているのか」を知るところから始めるほかありません。

5-2. 混雑は「情報がないこと」からも生まれている

ここで見落とされがちな事実があります。観光客の側も、混雑を望んで来ているわけではないということです。

長い行列に並びたい人はいません。それでも同じ場所、同じ時間帯に人が集まるのは、多くの場合、ほかに選択肢があることを知らないからです。一本隣の通りが空いていても、30分ずらせば待たずに入れても、その情報がなければ判断のしようがありません。

つまり混雑の一定部分は、人が多すぎることではなく、情報が偏っていることによって生まれています。そしてこれは、原因を止められない要因とは違い、手を打てる領域です。

5-3. 情報が見えると、観光客を減らさずに快適な環境を作るヒントになる

この違いは、対策の性格を大きく変えます。

入場制限は「来ないでください」という要請であり、地域の都合と観光客の希望が正面からぶつかります。一方で可視化は「いまはこちらが空いています」という情報提供です。観光客は快適に回れ、地域は混雑が緩む。両者の利害が一致する、数少ない打ち手だといえます。

訪問者の数そのものを減らさなくても、詰まっている部分をほぐすことで、圧力だけを下げることにつながります。 パンパンに膨らんだ状態から少しずつ空気が抜けていくようなイメージです。受け入れる人数を維持しながらオーバーツーリズムを緩和するという、一見両立しない要求に応えられるのは、この方向性だからです。

6. 人流データで現状を把握する「OPTiM AI Camera」

感覚ではなく数値で現状を捉えるための手段の一つが、カメラ映像から人の流れや滞在傾向をデータ化する人流解析です。

OPTiM AI Cameraは、エリアごとの人数や滞在時間をリアルタイムで分析・表示し、曜日・時間帯別の混雑傾向を蓄積して比較できます。解析対象の人物は匿名処理された形で表示されるため、プライバシーに配慮した運用が可能です。

これは自治体や観光地に限った話ではありません。訪日客の来店が増えている店舗や商業施設であれば、どの時間帯にどれだけの人が滞在しているかが分かることで、人員配置や案内表示の見直しといった判断につながります。

機能の詳細や導入イメージについては、資料をご用意しています。混雑への対応を検討されている方は、下記より資料をダウンロードの上、ご確認ください。

OPTiM AI Cameraの資料ダウンロード・お問い合わせはこちら

このブログの免責事項について

「OPTiM AI Cameraシリーズ」に関するお問い合わせはこちら