企業では、PCやクラウドサービス、ネットワーク、スマートフォンなど、日々の業務に欠かせないIT環境が増え続けています。一方で、専任の情報システム担当者を置くほどの業務量ではなかったり、ひとり情シスや兼任担当者に業務が集中したりするケースは少なくありません。
こうした課題の解決策として活用されているのが、情シス代行です。日常的な問い合わせ対応からPC管理、アカウント管理、セキュリティ対策、システム運用までを外部の専門会社に委託することで、社内の負担を抑えながら安定したIT運用を目指すことが可能です。
本記事では、情シス代行の基本的な仕組みや任せられる業務、導入のメリット、活用時の注意点を解説します。
1. 情シス代行とは
1-1. 情シス代行・情シスアウトソーシングの基本的な仕組み
情シス代行とは、企業の情報システム担当者が担う業務の一部または全部を、外部の専門会社へ委託するサービスです。情シスアウトソーシング、社内IT支援などと呼ばれる場合もあります。
委託できる範囲は、PCやスマートフォンの初期設定、社員からのIT問い合わせ対応、アカウント管理、ネットワークの保守、セキュリティ対策など多岐にわたります。すべての業務を任せるだけでなく、負担の大きい定型業務だけを切り出して委託することも可能です。
たとえば、日常のヘルプデスク対応は外部に任せ、IT投資の判断や社内調整は自社で担うといった役割分担ができます。自社に必要な業務量や専門性に応じて専門チームの支援を活用できるため、IT人材が不足している企業や、IT人材の採用が難しい企業にとっても、有効な選択肢です。
1-2. 情シス不足の解決策にはどのような選択肢があるか
情報システム担当者の不足を補う方法には、情シス代行だけでなく、正社員採用や派遣・SES(常駐)の活用、PC保守業者への依頼などがあります。それぞれ得意とする領域や運用体制が異なるため、自社の課題や求める支援内容に応じて選択することが重要です。
情シス代行
ヘルプデスクだけでなく、PCやスマートフォンの初期設定(キッティング)、IT資産管理、アカウント管理、運用保守、セキュリティ対策、ベンダー対応などを包括的または部分的に任せられる点が特徴です。日常運用を安定させながら、必要に応じて改善提案まで受けられるサービスもあります。
情シスの正社員採用
情シス担当者を正社員として採用する方法です。社内にノウハウを蓄積しやすく、自社の業務や組織文化を深く理解した体制を構築できます。一方で、採用や教育に時間とコストがかかり、人材確保が難しいケースもあります。
派遣・SES(常駐)
派遣やSESは、ITスキルを持つ人材の稼働を確保する方法です。比較的短期間で人員を補強できるため、一時的なリソース不足や特定業務への対応に適しています。ただし、業務の管理や引き継ぎは自社側で行う必要があります。特に偽装請負や二重派遣には注意が必要です。指揮命令体制を明確にして遵守をすることが重要です。
PC保守業者
PCの故障対応やネットワーク機器の保守、機器交換など、特定の課題に対して都度支援を受ける形態です。必要なタイミングで利用できる手軽さがある一方、日常的な問い合わせ対応や継続的な運用管理には向いていません。
以下は、代表的な解決策を比較したものです。
情シス不足の解決策を比較
| 項目 | 情シス代行 | 情シスの正社員採用 | 派遣・SES(常駐) | PC保守業者 |
|---|---|---|---|---|
| 立ち上がりの早さ | 比較的早い(1か月ほど) | 遅い(採用難:3-6か月を要する場合がある) | 比較的早い(2週間-2か月ほど) | 早い(数日-2週間ほど) |
| 対応範囲 | 情シス業務全般+改善提案 | 人材のスキル次第 | 契約した業務のみ | 障害・故障対応が中心 |
| 属人化・退職リスク | 低い(チームで対応) | あり | あり(要員交代あり) | 低い(担当依存は少ない) |
| 社内に必要な管理 | 比較的少ない | 育成・評価が必要 | 業務管理・指揮命令体制の整備・把握が必要 | 都度の依頼が必要 |
| コストの特徴 | 月額で予算化しやすい | 人件費+採用費 | 人員稼働に応じた費用 | 都度払いで変動 |
| 業務量の柔軟性 | ◎ 必要な分だけ依頼可能 | △ 固定人員 | △ 一定稼働が前提 | ○ 都度依頼 |
| 向いている企業 | 情シス不在・兼任で回している | 長期的に内製化したい | 業務内容が明確に決まっている | IT利用が少なく、困ったときだけ対応したい |
1-3. リモート型・訪問型・スポット型の支援形態
情シス代行の支援形態は、主にリモート型、訪問型、スポット型に分けられます。自社の業務量、拠点数、緊急対応の必要性に応じて選ぶことが重要です。
- リモート型:電話、メール、チャット、遠隔操作ツールなどを使って支援を受ける形態です。社員からの問い合わせ対応、アカウント管理、クラウドサービスの設定、IT運用の相談などに向いています。常駐スペースを用意する必要がなく、必要な範囲から始めやすい点がメリットです。
- 訪問型:担当者が定期的または継続的にオフィスを訪問し、現地で業務を行う形態です。キッティング、機器交換、ネットワーク機器の対応、社内関係者との調整が多い業務などに適しています。対面でのやり取りを重視したい場合や、現場対応が頻繁に必要な場合に有効です。
- スポット型:PCの大量入れ替え、オフィス移転、新システム導入、担当者退職時の引き継ぎなど、一時的に業務量が増える場面で活用する形態です。恒常的な委託ではなく、必要な期間・作業だけを依頼したい企業に適しています。
実際には、リモート対応を基本としながら、必要なときだけ訪問対応を組み合わせる運用もあります。自社のIT環境と業務の発生頻度を整理したうえで、最適な支援形態を検討しましょう。
2. 情シス代行で任せられる主な業務
情シス代行では、日常的な運用業務からIT環境の改善支援まで、幅広い業務を委託できます。ここでは、代表的な業務内容についてご紹介します。
2-1. PC・スマートフォンのキッティングとIT資産管理
従業員が利用するPCやスマートフォンの初期設定(キッティング)や管理業務を依頼できます。
主な業務例は以下のとおりです。
- PC・スマートフォンの初期設定
- ソフトウエアのインストール
- 端末の在庫管理
- IT資産台帳の管理
- 端末の回収・廃棄対応
- MDM(Mobile Device Management)製品の選定・環境構築および運用管理
特に従業員の入退社が多い企業では、運用負荷の軽減につながります。
2-2. アカウント管理と入退社時のIT対応
入社・異動・退職に伴うアカウント管理も、情シス代行へ委託できる代表的な業務です。
- Microsoft 365やGoogle Workspaceなどのアカウント発行・削除
- メールアドレス作成
- 権限設定・変更
- ライセンス管理
- 退職者アカウントの停止
適切なアカウント管理は、情報漏えい防止やセキュリティ強化にもつながります。
2-3. ヘルプデスクとITトラブル対応
従業員からの問い合わせ対応やトラブル対応も、情シス代行が担う重要な業務の一つです。
- PCやスマートフォンに関する問い合わせ対応
- Microsoft 365などの利用サポート
- ネットワーク接続不良の一次切り分け
- プリンターや周辺機器のトラブル対応
社内問い合わせ対応を委託することで、担当者の負担削減につながります。
2-4. ネットワーク・クラウドサービス・システムの運用保守
社内のITインフラや業務システムの安定運用を支援します。
- ネットワーク機器の管理
- VPNやWi-Fi環境の運用
- クラウドサービスの設定・運用
- サーバーやシステムの監視
- 障害発生時の対応・ベンダー連携
IT専任者が不在の企業でも、安定したシステム運用を実現できます。
2-5. ITツール・SaaSの導入支援と運用管理
近年は、業務効率化を目的としたSaaSやクラウドサービスの導入支援を提供する情シス代行も増えています。
- ITツールの選定支援
- SaaSの導入設定
- 利用ルールの策定
- マニュアル作成
自社に適したツールを導入し、定着までサポートを受けられる点がメリットです。
2-6. セキュリティ対策とIT環境の改善提案
企業のIT環境を安全かつ効率的に運用するための支援も行います。
- セキュリティソフトの運用管理
- OS・ソフトウエアのアップデート管理
- アクセス権限の定期見直し
- セキュリティポリシーの運用支援
- IT環境の改善提案
サイバー攻撃や情報漏えいのリスクが高まる中、専門的な知見を活用した継続的な対策が可能です。
なお、上記は情シス代行業務の一例であり、サービスによって対応できる業務範囲は異なります。ヘルプデスクやIT資産管理などの日常運用に特化したサービスもあれば、IT企画支援やAX/DX推進、システム導入プロジェクトの支援まで対応可能なサービスもあります。自社の課題や目的を明確にしたうえで、最適なサービスを選ぶことが重要です。
3. 情シス代行を活用するメリット
3-1. 必要な業務量に応じて専門チームの支援を活用できる
情シス代行の大きなメリットは、自社に必要な業務量や課題に応じて柔軟に支援を受けられることです。
派遣契約やSESでは、一定の稼働時間を前提として人員を確保するケースが一般的ですが、情シス代行では問い合わせ対応やアカウント管理、キッティングなど、必要な業務だけを切り出して依頼できます。
そのため、専任担当者を配置するほどではないものの、IT運用に課題を抱えている企業でも利用しやすく、事業の成長や組織変更に合わせて支援範囲を調整しやすい点も特徴です。
情シス代行であれば、ヘルプデスクだけ、キッティングだけ、繁忙期だけといった形で、必要な範囲を選んで依頼できます。日常業務は少ないものの、トラブル時には専門家の支援が必要という企業にも適しています。
業務量の増減に合わせて契約内容を見直せるサービスであれば、事業成長や組織変更にも対応しやすくなります。
3-2. 兼任担当者やひとり情シスの負担を軽減できる
総務や経理、人事などが情シス業務を兼任している場合、ITトラブルへの対応が本来業務を圧迫することがあります。専門知識が不足している場合は、調査やベンダーへの問い合わせにも時間がかかります。
また、情シス担当者が1人しかいない「ひとり情シス」の企業では、問い合わせ対応やアカウント管理、PCキッティングなどの定型業務がすべて1人に集中し、改善やAX/DX推進に手が回らないことがあります。
情シス代行を活用して、問い合わせ対応や定型作業を外部に任せることで、社内担当者はIT企画、業務改善、セキュリティの見直し、社内調整など、より重要度の高い業務に集中しやすくなります。
重要なのは、単に業務を減らすことではなく、確保できた時間を何に使うかを明確にすることです。定型業務の外部化によって生まれた余力を、成長に必要な取り組みへ再配分できるかが活用効果を左右します。
3-3. 属人化を防ぎ、安定したIT運用を実現できる
情シス業務を特定の担当者に依存していると、休職、退職、異動などによって業務が停滞するリスクがあります。特に、端末台帳、アカウント一覧、障害対応の履歴、ベンダー連絡先などが整理されていない場合、引き継ぎが難しくなります。
情シス代行の導入時には、現状業務の棚卸しや手順書の整備、IT資産情報の確認が必要になります。このプロセスを通じて、業務や情報を見える化し、属人化を緩和することができます。
また、個人ではなく複数人やチームで対応する体制を選べば、担当者が不在でも対応が継続しやすくなります。対応履歴やFAQ、手順書を社内にも共有できる仕組みをつくることで、委託先への過度な依存を防ぐことも大切です。
3-4. 採用・教育コストを抑えながら専門知識を活用できる
IT人材は採用競争が激しく、自社に必要なスキルを持つ人材を確保することは容易ではありません。採用できた後も、業務内容や利用システムに関する教育、セキュリティルールの共有などが必要です。
情シス代行を利用すると、すでにIT運用の経験や知識を持つ専門チームの支援を受けられます。自社だけでネットワーク、クラウド、セキュリティ、端末管理のすべてをカバーする体制を整えるよりも、効率的に専門性を補える場合があります。
ただし、外部委託の費用だけでなく、社内で対応を続ける場合の採用費、教育費、管理工数、担当者不在時のリスクまで含めて比較することが重要です。単純な月額料金だけではなく、安定運用や業務停止リスクの低減も含めて費用対効果を判断しましょう。
4. 情シス代行を活用する際の注意点
情シス代行は有効な手段ですが、すべての業務を外部に任せればよいわけではありません。委託範囲が曖昧なまま導入すると、対応漏れ、認識違い、追加費用、社内ノウハウの不足といった問題につながる可能性があります。そのため、情シス代行を導入する前に、社内に残す業務と委託する業務を明確にしておく必要があります。
一般的に、手順が決まっていて標準化しやすい業務は外部委託と相性がよいといえます。
- PCキッティング
- ヘルプデスクの一次対応
- アカウント発行・削除などの定型作業
- IT資産台帳の更新
- ライセンス管理
- ネットワークやシステムの監視
- FAQや手順書の作成・更新
一方で、経営判断や自社の事業戦略と密接に関わる事項については社内が最終的な意思決定を担いながら、必要に応じて情シス代行の専門知見を活用することで、より実効性の高いIT施策の推進につながります。
例えば、IT投資の最終判断や中長期的なIT戦略・AX/DX戦略の方向性決定は、経営方針や事業計画と深く関わるため、経営層や社内責任者が最終的な意思決定を行う必要があります。
ただし、情シス代行サービスの中には、IT企画の立案支援やAX/DX推進の検討、システム導入時の要件整理など、上流工程の支援まで対応しているサービスもあります。そのため、自社だけで進めるのではなく、外部の専門知見を活用しながら意思決定を行う体制を構築することも有効です。
導入前には、現在の業務、問い合わせ内容、利用中のIT機器・サービス、対応時間帯、緊急時の連絡方法を整理しましょう。そのうえで、委託先と責任分界点、対応範囲、エスカレーションルール、追加費用の条件を明確にすることが、安定運用につながります。
5. よくある質問
Q. 情シス代行とは?
A. 情シス代行とは、情報システム担当者が担う業務の一部または全部を、外部の専門会社に委託するサービスです。PC管理やアカウント管理、ヘルプデスク対応、ネットワーク運用、セキュリティ対策などを委託でき、情報システム担当者の負担軽減やIT運用の効率化につながります。情シスアウトソーシングや社内IT支援と呼ばれることもあります。
Q. 情シス代行はどんな企業におすすめですか?
A. 情シス代行は、ひとり情シスや兼任担当者のみでIT運用を行っている企業におすすめです。特に、PC管理やアカウント管理、ヘルプデスク対応などの日常業務に追われている企業や、IT人材不足に課題を抱える企業、今後の事業成長に向けてIT基盤の強化を進めたい企業に適しています。専門家の支援を受けることで、運用負荷の軽減とIT環境の最適化を実現できます。
Q. 情シス代行の費用はどれくらいですか?
A. 情シス代行の費用は、委託する業務の範囲や月あたりの対応時間、リモート対応か訪問対応かによって異なります。月額の定額制や、対応時間・作業単位で料金を設定するものなど、料金体系はサービスによってさまざまです。
検討の際は、月額料金だけでなく、専任担当者を採用する場合の人件費・採用費・教育費とも比較し、自社の業務量に見合ったプランを選ぶことが重要です。
「OPTiM Biz 情シス代行」では、月8時間相当の業務が目安のライトプラン(月額13.5万円・税抜)から、業務量に応じたプランをご用意しています。日常的な運用業務に加え、IT企画支援やAX/DX推進支援までご相談いただけます。
Q. 情シス代行は、依頼してからどれくらいで利用を開始できますか?
A. 情シス代行は一般的に、現状のヒアリング、業務の棚卸し、委託範囲と料金の決定、引き継ぎ(オンボーディング)を経て運用開始となります。委託する範囲が広いほど、業務の整理や手順書の準備に時間がかかるため、余裕を持って相談を始めることが大切です。
「OPTiM Biz 情シス代行」では、ヒアリングから業務棚卸・課題整理を経て、お見積もりのご提示まで約2〜3週間が目安です。
6. まとめ
専任の情シス担当者を置くことが難しい企業や、ひとり情シス・兼任担当者に業務が集中している企業では、必要な範囲から「情シス代行」を導入することで、社内の負担軽減と安定運用を目指すことが可能です。属人化の解消やIT資産・アカウント管理の整理にもつながります。
導入時は、社内に残す業務と委託する業務を整理し、対応範囲や責任分界、緊急時の連絡方法を明確にすることが大切です。自社の課題や業務量に合った支援形態を選び、継続的にIT環境を改善していきましょう。
株式会社オプティムでは、情シス業務を、必要な分だけ専門チームに任せられる「OPTiM Biz 情シス代行」を提供しています。
「OPTiM Biz 情シス代行」は、ヘルプデスクやアカウント管理などの日常業務から、IT運用改善・IT企画支援まで、月8時間からのプランで必要な分だけ依頼できるサービスです。デリバリーマネージャーが一元窓口となって業務を整理し、月次レポートで改善提案を行うため、委託範囲が曖昧になる心配も抑えられます。各社ごとの状況に応じたご支援が可能ですので、まずはお気軽にご相談ください。

